農業の醍醐味.30回


はじめに
 2002年11月3日〜16日迄、ブラジルのオカダモキチ財団のお招きを頂き(財)自然農法国際研究開発センター理事長と共に渡伯した。
 オカダモキチ財団は文化活動、教育、出版、自然農法など7つの分野から成り立っている。オカダモキチ財団の母体はブラジルの世界救世教で信徒数35万人、9割以上が現地人である。日本人は1割いないという。
 今回はオカダモキチ財団の中で自然農法を担当するオカダモキチ研究所(以下研究所という)の職員50人と、研究所を支援下さっている大学教授6人が入った年2回の研究会(2泊3日)への参加と農場視察であった。また、研究所の関連団体である株式会社KORIN、オカダモキチ認証協会の視察や、研究所との様々な提携についての話し合いも行った。

イペウナ農場
 最初に訪問したのはサンパウロから内陸に向かって約200km位の所にあるイペウナの農場であった。農場は270haの広大な農場で、農場の中に研究所の事務所、研究棟、研修場があり、ハウス等の実験圃場と広大な展示圃場があった。外に株式会社KORINの経営するニワ鳥の解体場と月産700tのニワ鳥の飼料工場、プール付きゲストハウス等があった。
 研究棟にはガスマスを始め多くの分析機器が揃っていた。ここでは農家から、病中害や土壌から由来する障害のおきた作物と土壌が持ち込まれ検査されていた。科学性・物理性を含めた土壌分析、カドミウム等の重金属の分析、微生物の分析、また作物病理のドクターによる診断も行われていた。持ち込まれたサンプルに対しては、1件1件の処方箋が書かれそれに基づいた農家への指導が行われ、そのデーターの蓄積もしていた。
 また、育種にも力を入れていた。10人の程度のスッタフがいて病理のドクターも加わり耐病性品種にも取り組んでいた。日本で育種されたキュウリの自農C-1トマトのメニーナはブラジルでも有望な品種で近く販売したいとの話があった。
 全体として大変きめ細かい取り組みをしていたが、ただ少し対応技術にかたよっている感じがした。その点自然農法で大切な育土や品質等の確定に対するアドバイスをした。
 ブラジルの土は全般的に赤く、粘土質の硬い土で、腐植のあるところは少し赤黒い色をしている。土壌の歴史が古くアフリカの土壌とほぼ同じとのことで、歴史が古いだけに養分の溶脱が進み土はやせている。
 熱帯、亜熱帯では土に腐植が蓄積しにくく植物は養分を体に蓄えるものが多いという。街路樹は豆科の木が非常に多かった。そんな中でイペウナの農場では3年前から土壌が全く見えなくなるように敷草をしていた。土に棒をさすと30cm以上はスッと入っていく。土の色は黒味を帯びいい臭いがしてミミズも多くなったと言う。見事に団粒化していた。ブラジルの土壌は棒がささっても5〜6cm位で30cm下は芯土になるという。
 岩石が風化して粘土が出来、動植物の遺体が腐植となって草原が出来、低木材、森林が生まれる。森林は最も生命活動の旺盛な極相である。腐植が豊かで団粒化した森林土壌は多種多様な生物を育て生命活動が最も豊かになる。その森林の自然を耕地に再現するのが自然農法の育土である。
 イペウナの農場を見てどんなやせた土壌でも人間のかかわり方で豊かな土壌に育てることが出来ることを知った。砂漠は砂漠から学んで育土を始め最後は森林の姿まで土を育てることは人間のかかわり方によって出来ることを知った。自然に対する人間のかかわり方によって、自然はより豊かになることを知らされた思いがした。
 他に研究所が力を入れていたことは、企業や畜産の浄化槽の処理であった。それぞれの浄化槽の汚水の主な菌の分析をして、それぞれに対応したEM活性液を作成し対応していた。このことが科学性があると発注者へのインパクトがあり、現在100件以上のコンサルタントをし、成功しているという。ブラジルでは汚水処理では最も信用されていると言う。
 また農産物の流通を助けるための加工食品の研究、鮮度保持を目的とした波動袋の研究もしていた。

アッチバイヤー農場
 次に見学した農場はイペウナからサンパウロに向かって、ややサンパウロよりになる、アッチバイヤーの農場であった。この農場は1979年に自然農法が始められたブラジルで一番古い農場で17haであった。雨よけのレタス、サニーレタスが見事に実っていた。レタスは周年栽培しているという。この農場はKORINの直営農場だったのがいまは委託農場になっている。KORINの野菜、果物の集配所にもなっていた。KORINについては後に触れたい。

リオ農場
 次に見学した農場はリオ・デ・ジャネイロから車で約1時間のところにあるリオ農場であった。広さは430haでそのうち260haは自然がまだ残った原生林であった。今はKORINの直営農場からオカダモキチ研究所に管理が移ったところで、耕地は管理している人達が一部様々な野菜やトウモロコシ、緑肥などを作付けしていた。自然の豊かなところで、土曜、日曜にはリオの世界救世教の信徒の人達がバス数台でやってきては自然を満喫して行くという。
 バナナはいたるところにあり、アセロラは見事に実っていた。熟したアセロラを木から取って食べたがとても美味しかった。それをジュースにして頂いた。大変美味であった。
 ゲストハウスから460haの自然を見ていると去りがたい思いがした。

自然農法の普及状況
 今回は11月で植え付け時でもあったので、個人の農場には訪問しなかった。研修会後、次回の農場訪問を強く要望された。研修会では各普及員からブラジルの普及状況の詳しい報告があった。概略説明をさせて頂く。
 認証については後で触れるが、自然農法の認証を受けている農家が84軒で2087ha。コンスタントに指導し情報を共有している農家が500軒。自然農法に取組始めている農家は約2500軒であるという。驚いたのは一番大面積の農家は2400haの大豆畑で従業員は1000人を超えるという。ヨーロッパの認証団体から認証を受けヨーロッパに輸出している。一部「ずいうん」でも輸入していた。
 作付け作物は熱帯、亜熱帯と地域によって異なっている。熱帯はコショーや果物が多い。お世話している農家の栽培面積は個人差はあるが大体平均するとトウモロコシや小麦等の穀類は500ha位、コーヒーは200ha位、バナナは300ha位、野菜は1ha〜4ha位の面積で栽培されている。ブラジルは何でも大きいが農地の大きさにも驚かされる。

終わりに
 今回初めての渡伯であった。ブラジルで有名なリオの夜景。キリスト像へ案内されコパカバーナの海岸にも案内頂いた。三大夜景の一つと言われるリオの夜景はさすがであった。
 もう一ヶ所がブラジル観光では目玉になっているというイグアスの滝を訪ねた。なんと滝の巾が3kmでアメリカのナイヤガラの滝の3倍のスケールだと言う。かってニクソン大統領夫人が訪ねられ、ナイヤガラの滝がかわいそうと言ったのだそうだ。私の行ったときは水量がいつもの5倍近くあるとのことで迫力は更に増していた。滝の落差は80m位で二段になって落ちている所もあるが、水が滝から落ちてあがる水煙は滝の高さの倍以上に上り、水煙は数キロ先から見え、轟音も聞こえてきた。イグアスの滝はブラジル、アルゼンチン、パラグアイの交わる三角点になっていた。ブラジル側とアルゼンチン側から見学したがそれぞれ、趣があって素晴らしかった。日本の滝とはまるで違い、滝と言うより何か他のものを見ているような気がした。ここでもスケールの大きさに驚いた。
 もう少しブラジルの報告をさせて頂きたいので続きは次回にさせて頂く。


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