農業の醍醐味.32回


はじめに
 5月6日、自然や命を大切にした生き方や暮らし方、考え方を基本にした町つくりの為に新しい提案を携え、再び徳島県三野町を訪ねた。三野町へは一昨年(平成13年11月)訪問させていただき、「えむえむ関東」42号に取り上げさせていただき、「第7回自然農法・EM技術交流会横浜大会」でも発表していただいた。発表は、三野町有機農作物生産組合の組合長宮内和春さんであった。参加を楽しみにされていた町長さんは急な所用でこれなかったが、生産組合の皆さん方で大会に参加され、発表と同時に大会でおおいに刺激を受け、町つくりの更なる進展を誓われて帰られた。今号ではその後の報告をさせて頂く。

三野町の概略と当初の取り組み
 三野町と、当初の取り組みについてもう一度簡単に紹介したい。三野町は、四国のほぼ中央に位置し両側から山が迫る四国三郎・吉野川の中流域に当たる中山間の農業地帯である。人口は約1600世帯、5200人で農家数は558戸、そのうち8割は兼業農家だ。一戸当たりの耕作面積は77aと郡内では最も広く気候的にも恵まれている。主な栽培作物は水稲、露地ナス、ハッサク、たらの芽、タマネギ、キャベツ等である。
 活動の母体は、三野町有機農作物生産組合で、三野町農業委員会会長である宮内和春さんが組合長で、議員さんや、婦人会役員、学校の先生、専業農家等11名の組合員が中心となり、町長さんはじめ町役場との連携により様々な活動が展開されていた。
 最初に組合員一人一人が水稲や野菜、「あまご」の養殖等、EMの活用に取り組んだ。取り組みから自信を得ると小学校の授業の中で自然農法の講師をはじめ、生ごみボカシ和えに取り組んだ。ボカシは組合で作り、町の厚生課が窓口になり各地区の婦人会を通じて配布、集金される。当時で町の全世帯の約1割5分で生ごみボカシ和えの実践がされていた。
 産業課との連携では、中山間地地域整備事業の一環である農業公園整備事業である。組合が中心となってこの整備事業を提案し町が受けた。町内の10の地域に家庭菜園と試験田を計画し、維持管理は組合に任され、客土等の工事は国と町が行うことになった。家庭菜園は自然農法を中心に計画している。 
 そして、その中心に国55%、町45%の補助金による活性化センターの建設を計画している。これは約450uの多目的な建物で、組合が設計等中心的な役割を果たしながら1億2千万円をかけて平成14年8月完成を目指していた。備品のトラクター等は町が補助することになっている。
 また、町が若者定住の住宅を建設し、そこに入居した人達に遊休地を試験田にし年間500円から1000円程度で提供し有機農業に親しんでもらうよう取り組んでいる。現在2地区で建設が始まっている。
 その他産業課との連携は、平成14年5月目指して道の駅の建設に取り組み始めていた。以上が一昨年訪問したときの主な取り組みであった。

1年半ぶりの訪問
 今回約1年半ぶりに三野町を訪ねた。その活動は前進していた。
先ず、組合員11人で始めた活動が、現在は、会費を払い自分たちの組合という意識をはっきり持って積極的にボランティア活動をする会員は58人になった。生ごみボカシ和えをしている町民は全世帯の約1割5分であったがそれも着実に増えているという。それに伴い家庭菜園の取り組みも増えた。家庭菜園での成果も喜びも増えていた。

環境浄化活動
 米のとぎ汁発酵液やEM活性液での環境浄化活動も進んだ。その中で特に素晴らしい成果の一つは、三野病院という総合病院とそこに隣接する300世帯のし尿や家庭雑排水、病院の排水処理であった。EM使用以前は浄化槽で処理された排水がすぐ近くの川に流されて、その悪臭がひどく苦情が絶えなかったという。EM活性液の投入は1年前より取り組み始めた。20日に1回、20gのEM活性液を250倍にして浄化槽の3カ所のマンホールから流した。投入してから6ケ月位して悪臭はほとんどなくなり、それから1ケ月位の間に浄化槽の廻りやバッキ等の管にべっとりと着いてたスカムがほとんど無くなってしまったという。マンホールからのぞいたら臭いはかすかで、浄化槽のコンクリートがそのまま見え、少し青みかかった水があるだけであった。
 EM活性液の活用についてのもう一つの成果は、後で触れるが農村公園整備事業の中心となる活性センターに隣接する町の保養施設「紅葉温泉」への活用であった。
 紅葉温泉はレジオネラ菌が平成14年3月の採水検査で880cfu/100mlを越えてしまい試行錯誤していた。いろんな業者の売り込みがあったがどれも経費がかかりすぎた。そこで早速EM活性液の活用となった。平成14年3月に始めた。活用法は、翌日休みになる日曜の夜、浴槽水を半減後、男女湯ともにEM活性液10gを原液で投入し、循環させる。そして、洗い桶や椅子、石鹸箱等を皆浸けておく。
 翌朝になると、その湯を流し、新たに10gの活性液を10倍にしたものできれいに清掃する。温泉の中に入ってみるとかすかに甘いようなEMの臭いがしたような気がした。何ともさわやかな感じであった。温泉特のムッとするような臭いは全くなかった。
 平成14年8月、採水検査の結果、レジオネラ菌は10cf/100ml未満、実際は検出されなかった。大腸菌は0、その他素晴らしい結果が出ていた。温泉を担当する社会福祉協議会の会長さんも大変喜んでいたという。平成15年4月の採水検査の結果も基準値以下を継続していた。その他米のとぎ汁発酵液での環境浄化の活動はいろんなところで行われていた。近隣の町むらにもその活動は拡がっていた。

産業課とタイアップした活動
 中山間地地域整備事業の一環である農業公園整備事業は、その中心である活性化センターが昨年8月に完成の予定が、訪問したとき完成したばかりでオープン前に見学させていただいた。48畳の和室の研修室、洋式の会議室、調理実習室、食品加工室等建設面積478u、施設面積516u(作業ヤード下屋部分を含む)であった。1億2千万円の予算が、1億5千万円になったと言うだけに見事な施設であった。竣工祭はこれから決まるのだという。従って、活性センターに付属している約5反歩の家庭菜園、ほか9カ所の家庭菜園の造成はこれからであった。道の駅は既に完成し営業していた。EMコーナーがしっかりとってあった。
 若者向けの定住住宅も2区で完成し、若者の入居により町の人口も増えているという。農業への取り組みについては今回新たな提案を持って訪問したがそのことについては残念ながら紙面の関係でふれられない。しかし、農業への取り組みも大きく開けようとしていた。
 ある人からの紹介で有機農産物の販路となるある商社との話し合いに入ろうとしていた。産業課のバックアップにより、有機農業生産組合が本腰を入れて農家を募集し取り組もうとしていた。有機の郷への取り組みが本格的に始まろうとしていた。自農センターとしてのバックアップも約束してきた。

おわりに
 三野町の取り組みは一つ一つ証立てながら前進していた。改めて、組合長さんの宮内和春さんのEMにかける夢と希望、パワーを感じた。26時中EMが頭から離れず、フトしたときに新しい工夫や取り組みが浮かぶという。そのパワーが会員のみなさんに伝わって居るのだと思った。皆ボランティアの精神に燃えていた。
 私たちが生活していれば出てくる生ごみや米のとぎ汁。自然の循環を断ち切り、環境を汚している生ゴミや米のとぎ汁が豊かな自然を蘇らせ、美味しい健康な野菜を供給してくれる。私たちの生活が、自然の中の循環として実感できるとき、自然と共に、自然の中で生活し、活動しているのだという安心感と、喜びを感じるのだと思った。宮内さんが言うには、不景気にもかかわらず、昨年から今年にかけて本業である住宅の内装の
仕事が今までになかったほど忙しかったという。ボランティア活動のおかげで感謝し、そこで生まれた余裕を更にボランティアに還元しようとしていた。
 大きくみれば、自然は太古より太陽エネルギーを育種しながら、自然が自ら有している生命による物質循環機能、浄化機能、自己調整機能等を通じて多種多様な生物が生まれ調和の取れた健康で豊かな方向に向っている。この自然の意志にかなうような生き方、暮らし方、考え方をすれば、自然も人間も同じように、より調和の取れた健康で豊かな方向へと必ず向うことを実践を通して示してくれているように思った。


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