自然尊重の社会システムに 4回


自然の進歩発展と共に生きる
NPO法人関東EM普及協会 名誉会長
(財)自然農法国際研究開発センター 元理事長
天野紀宜
関東EM普及協会の立ち上げ


自然農法の普及が、点から面への普及を加速させたのがEMの活用からです。そして、EMの活用は、環境問題に取り組む市民の人々と共に、自然農法をベースにした自然循環型地域社会作りを目指す好機を与えてくれました。そこで、関東EM普及協会の立ち上げ当時(平成6年8月)のことを取り上げてみたいと思います。

平成2年頃から農業によるEMの活用は、全国的な取り組みが始まり、その輪は着実に拡がっていました。そして、平成5年10月「地球を救う大変革」が出版されてより、耕種農家を始め、畜産、環境問題、工業利用の分野までEMは大反響を呼びました。
当時、私は、財団法人自然農法国際研究開発センターの関東地区普及所に勤めていましたが、その事務所にかかってくるEMに対する問い合わせは、日に数十本は下りませんでした。
それから、関東一円で講習会を開催しました。午前、午後2回、夜と日に4回の講演会など、連日続きましたが、とても全てに対応が出来るものではありませんでした。その反響に対応出来る人材の確保が欠かせなくなりました。

その当時上司からよく言われたことがあります。「EMは、生命を宿しており、微生物は、生態系のなかで生命による物質循環の基点でもある。それ故、EMは、1+1は2にならず、生きて活動すれば、2の何倍、何十倍、時には何百倍にもなる。死んでしまえば0となってしまう。化学肥料は1+1は2で、それ以上にもそれ以下にもならない。マニュアル通り使えば、誰が使っても同じ結果になる。EMは、使う人によって、また、使う場所や環境等の違いによって同じように使っても生きもし、死にもする。その結果は自ずと違ってくる。それ故、EMは、マニュアルだけでは伝わらない説明商品である。」と。

誰が扱おうともマニュアル通り使えば再現性を持たなければならないという科学技術とは違って、EMは生きものです。科学技術に囲まれて生活している私たちは、ともすると、生き物を扱う時、科学技術の考え方で扱ってしまうのではないでしょうか。それではEMの生命力を充分生かすことは出来ません。
自然や生命と向き合うことは、普遍性、再現性を求める科学技術だけの考え方に頼るのではなく、個々の生命と向き合わなければなりません。自然とは個々の生命のことを総称して言っているのですから。

そこで、EMを充分活用できる人材育成を願い、関東EM普及協会を、心ある人達と共に立ち上げました。
最初に取り組んだのは人材育成であり、講習会でした。分厚いテキストを作り、自然農法の理念・原理、自然農法の畑作、稲作の講習会を行いました。また、自然農法の果樹、EM活用の畜産、工業利用、環境利用等は専門家にお願いして講習会を開催しました。
私たちは、自然の中で生かされ、生活していることを自覚し、生活の全てにおいて、生命を尊び、自然を規範にしていくことの大切さを学びました。