土を育てる16回


土を育てる
NPO法人関東EM普及協会 名誉会長
(財)自然農法国際研究開発センター 元理事長
天野紀宜
 第四章 私の実践編

畑作の育土
畑作の育土、理想的な土層の育て方については、(公財)自然農法国際研究開発センターの圃場で説明させて頂きました。
私も10a(1反)程の圃場で、落花生やニンニクの出荷を兼ねて実験しました。ある程度の感触は得られました。
昨年秋からは、約1a(30坪)のみの取り組みとなりました。
残念ながら少々体調を崩してしまいましたので出来るだけ体を使わない楽々農業を目指しています。私を始め、老齢化してきた人達に提案したいと思います。勿論、若い人達にとっても、時間に余裕を持って楽しめる家庭菜園になると思います。
この家庭菜園に取り組んだのは8年前です。私の借りた畑は、強い粘土質で、下層が泥岩と言うところで、農家の人には、耕作には向いていないから開墾は止めた方が良いと言われました。しかし、住まいに近いので借りることにしました。
木イチゴなどの低木を抜根し、EMで飼育し、発酵した畜糞堆肥100kgと10kgの焼成蛎(かき)殻、15kgのEM発酵U型ボカシを投入し、活性液を散布し耕しました。耕した後、活性液を散布し、畝立てをしました。
土はゴロゴロしていましたが育てやすい根菜類や豆類は、結構良く育ち2〜3作した1年ぐらいで、EM活性液をせっせと散布したせいかサラサラした土に変わってきました。あまり早く土がサラサラしてきたので驚きました。
土手側の方の2畝は2年目に入っても土はゴロゴロしていて作物の生育も悪かったので、2年目も完熟堆肥を入れて耕しました。その後は耕していません。
約90cmの高畝にし、その畝間に近くの土手で刈った草をたっぷり入れます。1〜2作ごとに畝間で半熟した堆肥を鍬で畝に上げ、手で畝の形を整え、種を播いたり苗を植え、その上に草のマルチをしています。
即ち、一番上に未熟な有機物が有り、その下に半熟の有機物が有り、その下に耕土が有ります。これが私の家庭菜園での、養分を吸う根が最も多く張る表層土壌の育て方です。
夏場は、厚く敷いたはずの草マルチはどんどん分解されていきます。(春の果菜類の植え付け時の根の回りは、地温を上げるため草を取る等、作型によって多少工夫しています)

ここで紹介したいのは、出来る限り労力を省いた昨年からの取り組みです。
不耕起で草マルチは変わりませんが、以前と変わったのは、秋から春にかけての作物と、春から秋にかけての作物の連作です。それと畝間の堆肥を畝に上げて畝の形を整えるのも止めました。

例えば、10月初旬、秋なすの収穫をしている時期に、既にナスの下葉はありませんので、ナスの幹を外してニンニクを植えます。
5月の連休には前年のナスの幹が有った空いているスペースにナスの苗を定植します。
5月下旬にはニンニクの収穫です。
収穫後、ニンニクの後に落花生を植えます。落花生はニンニク定植前に収穫してしまいます。これを毎年繰り返すのです。
 
 ニンニクとナス。落花生の畝のニンニクです。     ニンニクを収穫し干しています。三日後に日陰につるします
   
 ニンニク収穫後のナスです  ナスと落花生が分かり易い写真です
       
農作業は、主に、ナスの苗作り、植え付けと収穫で、それ以外は、ナスが着き始めた頃から数回EMボカシを敷き草の上から散布することと、寒中にニンニクへEMボカシを散布することです。それにEM活性液の時々の撒布と、敷き草です。敷き草をしているので草が生い茂ることはありませんが、草の拾い取りは有ります。

   
 タマネギとキュウリ、落花生の畝です  タマネギの収穫で乾燥させています.
      三日後に日陰につるします
 
   
 ネギの後のキュウリと落花生ですが見えなくなって
しまいました。隣は空豆後の落花生でその隣は、
シシトウ、ピーマンです
 キュウリと落花生

上記以外の組み合わせを紹介しますと、5月連休にキュウリを畝の真ん中に定植し、畝の両側に誘引して2本立てとします。畝の両側には、5月中旬に落花生を植えます。
10月初旬には落花生を収穫しキュウリの収穫も終わり、タマネギの種を播き、11月中旬には、来春キュウリを植える畝の真ん中を空けてタマネギを定植します。

、「春定植するトマトと落花生、秋のタマネギの組み合わせ」、
   
 タマネギとトマト、落花生の畝です タマネギ収穫後のトマトと落花生 

「秋のキヌサヤ、エンドウと春からのインゲンの組み合わせ」もしています。
これらは、毎年同じ支柱をそのままに使えるので手間が省けます。 
また、「ソラマメと落花生」、「ゴーヤ、オクラとタマネギ」、「ジャガイモとニンジン、葉菜類」、「結球野菜とピーマン、シシトウ」、等で、周年は、葉菜類、ニラ、ラッキョウ、アサツキ等を栽培しています。
輪作、混作では、「浅根性のキュウリと深根性のニンジン、ゴボウ」、また、「長ネギ、ニラとキュウリ、スイカ」、「落花生とトマト、ピーマン」、「ニンジンと大豆」、「ジャガイモと里芋」等の組み合わせで、生育促進、病害虫防除、連作障害防止等を期待されていますが、私の場合、面積と食べたい作物の関係で少々作物への配慮に欠けるのではないかと思う組み合わせもありますが、土が育つことによってクリアー出来るのではないかと期待しています。

ただ、農業は、人間の都合に合わすのではなく、人間が自然に合わすのが本来の姿です。基本的には、そのことに心掛けています。
自然農法のねらいは、化石燃料始め多量な資材を投入する慣行化学農業と違い、圃場以外からの持ち込みを最小限にして、圃場内で多種多様な生命による物質循環によって、持続可能で、しかも、健康で美味しい作物を育てることにあります。
私は、圃場の収穫残渣や草、圃場の周りの草の活用を主とし、EMボカシを少々使うだけにして、EMの活用により、圃場での生命の循環を主に菜園を楽しんでいます。

専業農家の場合は、ある程度の範囲の中で、食品廃棄物による堆肥、畜産の堆肥等を活用し、活用する量に応じたEM活性液の撒布により生命による循環を促進し、健康で美味しく、生産性の向上、安定生産を計ることも考えなければなりません。
そして、廃棄物の再利用と消費を合わせ、地域での循環の輪を進めることも、現代社会では大切なことだと思います。
何れにしましても、私は、自然に自ずと備わっている偉大な機能・能力を、圃場に再現するだけでなく、私たちの生き方・暮らし方に拡げ、更に、社会システムにまで拡げて行かなくてはならないと思っています。