特集 EM環境学習

掲載記事:「えむえむ関東43号」より


生きる力を学んだ技術科・ 栽培領域での学習

鎌倉市立第一中学校 磯辺和宏

1 はじめに
私は静岡県のみかん農家の出身で、農業や自然といったものに愛着を持っています。それで中学校技術科の栽培領域で十数年ほど前より、食糧問題等を中心とした授業を行ってきました。「なんで3年になって農業の勉強なんかするんだ」という生徒のために「技術科は、生産について学習しある程度のことがわかる教科で、生産には工業と農業がある。農業とは人間が生きるのになくてはならない大切な食糧生産のことである。だからこれから食糧の生産のための学習をしていくんだよ。」と説明をした。
 教科書では、「生活をゆたかにする」「自然と人間生活」などが目的として上がっているが、「生活のうるおい」以前の人間生活・社会を支える栽培の学習という観点が弱いために、こどもたちには、「草花がきれいに咲けばよい」といった程度にしか理解されていない可能性がある。そのために授業の最初に栽培とは、本来食糧生産の活動なのだということを示した。そしてできる限り、現実の農業である露地栽培を行い、栽培をダイナミックな自然環境のなかで理解させようとした。

2 EMとの出会い
 江ノ島の近くにある鎌倉市立腰越中学校で、10年前に初めてEMを使った栽培の授業を行った。それまでは何の疑問もなく農薬や化学肥料を使った慣行農法をしていたが、実家の兄が農薬の吸い過ぎが原因と思われる病気で入院した。同じ頃、環境問題をまじめに勉強して生徒に提示すればするほど絶望教育となってしまっていた。せいぜい牛乳パックを集めたり空き缶をつぶしたりと、リサイクルのことを話したりしながらお茶をにごす程度で終わっていた。改めて考えてみると、「リサイクルをしていれば、環境問題が解決できるんだ」と思わしてしまうことのほうが怖い事だ。そんなジレンマに陥って何か未来に夢を与えるような環境教育はできないものかとふらっと本屋に入って手にしたのが「地球を救う大変革」であった。「何を大げさな・・こう言うのに限って中身がないんだよなー」と思いながら読んでみたのがEMへのめり込むきっかけであった。「とにかく授業に取り入れてみよう」と次のような授業を行った。

3 畑のある学校での授業計画
テーマ 1 栽培のおこり ・・(3H)
(1)きみたちと食べ物
(2)主食になる植物の発見
(3)農耕社会の成立と作物栽培の3つの条件            
テ−マ 2 トウモロコシの栽培・(14H)
(1)栽培する作物の特殊性を調べる
(2)学習の目標は、収穫とする
(3)土と肥料(EMについて)
(4)耕地づくり(EM処理した生ゴミの投入)
(5)作物の顔色と日常の管理
(6)EM処理した生ゴミ・発酵液での追肥(7)観察記録
(8)収穫・計量・試食
テ−マ 3 環境問題への解決方法・(8H)
(1)鎌倉・日本の農業
(2)地球環境白書・環境問題の現状
(3)EMを使った環境問題への解決方法

4 授業内容
テーマ1  
人間は農業生産という労働のなかで、社会を発達させてきたこと。現代に至るまでよりよい食糧を得るための努力をしてきたにもかかわらず、全世界の半数は、常に飢えている現状を背景にしながら、日本の食糧の大半は輸入であること、農業の誕生について、作物栽培で量的・質的に高める条件は何かを学習する。

テーマ2
子供にもそれぞれに個性があるようにそれぞれの作物も独自の特性があり、環境によって影響を受ける。5ヶ月という長期にわたる学習になるので一定の面積からどのくらいの収量を上げることができるかを動機づけとする。腰越中学校の農園は約50坪あるが海岸の近くのため土質はあまりよくないが、EMで生ごみを処理するためのバケツを3年生全員に配り、ぼかしを配布しながら生ごみ堆肥の作り方を説明した。生徒たちは、なんだかおもしろそうだなと興味を示した。密閉バケツは家庭に持ち帰り、1ヶ月ほどたったころバケツごと学校に持ってきた。バス通学の生徒にはなかなか勇気のいることだったようだ。畑に入れるときは「くさい」と言いながらも結構みんな楽しんで作業が行えた。まだこの時点では生ごみが土に還りどんな効果がでるかはとは想像もつかなかったようである。

テーマ3
地域農業の実態と日本農業の問題点から始まり、いろいろな資料・ビデオなどによりさまざまな地球環境問題とEMでの解決方法を学んだ。

5 EM技術を楽しく生活化
授業でのEM導入の目的は、EM技術を楽しく生活化していき、その結果として環境も良くなっていくことです。生徒たちが書いた生ごみ処理レポートでは、毎日自分の家の生ごみを点検し、ボカシをふりかけた後の発酵の具合をよく観察している。

生徒の感想(1)
■私たちの親が、子供が成長するとうれしいと思うように、私はトウモロコシがどんどん大きくなるとすごくうれしく思い、親が子供の世話をする気持やうれしく思う気持が分かったような気がした。そして私も元気に育たなきゃと、改めて感じました。     
■EMの力を、まざまざと見せつけられました。確かにゴミだったのにEMの行き届いている所のトウモロコシは、とても成長が早く大きく育ちました。
■生ゴミのリサイクルというのは初めて耳にしました。始めはそんなの信じられないと思っていましたが、実際体験してみて驚きました。EMでつくったトウモロコシが八百屋さんなどで売っているのよりもおいしいし、バケツから出る液肥の効果もすごいことが分かりました。
■EMはうちで大人気で、母が毎回これを使って生ごみ処理をしています。最初母は鼻をつまんで処理していましたが、今では「生ごみを出さなくて済んでいい」と言って楽しそうにやっています。
■一人一人がやっていくうちに、いつのまにかみんなでやっていて、気づかないうちにきれいになっている。早くそうなってほしい。「やってみればわかる」それがEMなんですね。私はとてもいい体験、そして勉強をしました。何かとてもうれしい気持です。

6 観察記録
栽培の実習は、計画的かつ継続的に行わなければならないが、栽培記録をあまり強く要求すると記録が苦痛になる。そこでトウモロコシの栽培記録の例を見せた上で、単純化し自由に記録させた。必ず記入しなければならない事としては、作物の大きさの記録として、葉の枚数・草丈・雄花・雌花がでていく過程の記録、自分の行った追肥などで、途中で点検してから返し、また記録を続けさせた。自分の所有権のはっきりしている一人一苗の栽培では楽しみながら記録をとっている様子であった。             
   
7 生ごみボカシ・液肥の追肥
 毎月一度、生ごみ・液肥の追肥を行ったが液肥が畑で使えきれないので、畑の横を流れているどぶ川に投入し続けた。数ヶ月後には川のよどみのよごれで見えなかった川底が見えるようになった。EM生ごみ堆肥の行き届いている所とそうでない所の差が激しくEMのパワーにみんな驚いた。    
                  
8 カボチャの自然発生
 夏休みの途中まで収穫・観察が続くが、トウモロコシの枯れるのを待っていたかのように生ごみの中に入っていたカボチャが大量に成長し出した。二学期の最初の授業で草ぼうぼうの畑に入るとやけに丸いものがぶつかる。カボチャだらけであった。食べきれないカボチャを技術室に放置しておき春先に包丁を入れてみたところ、腐るどころかプーンといい香りがした。改めてEMの抗酸化作用を実感した。               
                   
9 畑のない学校での環境教育
4年前に第一中学校へ転勤となった。有名な寺院の裏山にあり畑がないので体育館裏に放置されていた、クワも入らない硬い約20坪の土地に毎年黒土を入れた。庭のない家庭が多いのでボカシを配布し、水気を切った生ごみとを混ぜたものをビニール袋で二重に密閉したものを毎週提出させた。集めたものは学校にある大型の密閉バケツで発酵させ、畑に投入した。液肥は毎年大量に出る落ち葉と混ぜて発酵させた。
生ごみ処理に関しては、鎌倉市では以前より密閉バケツ購入に関しては補助があったが昨年度より9割補助となった。バケツ2個とボカシ4個の合計約6000円のものが600円で購入できるようになった。いかに生ごみ処理に困っているかという表れでもある。バケツを買いたいという声が増えてきたので授業中に購入手続きなどについても説明した。庭のない家庭で楽しく生活化できるものとして米のとぎ汁発酵液の活用を重視した。
3年生全員にEM1号を配布し各家庭でペットボトルで発酵液をつくり、定期的に学校に持ってこさせ、ミニトマトへの追肥として活用した。家庭では、プランターや流し、ペットへの利用など楽しみながら実践している様子がレポートからもうかがえた。
EMのキーワードでもある「抗酸化作用」を理解させるため、太い鉄の2本のボルトを半年間EMを入れた水・入れない水の中に浸したものを掲示したことも役に立った。

ミニトマトの栽培観察レポート・EM体験レポート・戦争体験聞き取りレポートの3部作を夏休みの課題としている。これらは食糧問題が戦争にまで発展する危険性や「共存共栄」を目指して、自分たちのできることを体験を通して学ばせようとした。

10 生徒の感想(2)
■最初まだ40Bしかなかったトマトがもう僕より高くなっていて信じられなかった。今61個だから目標は120個です。夏休みも学校にきてちゃんと観察していこうと思います。米のとぎ汁発酵液も家で利用していきたいです。       
■農業ですごい力を発揮したEMだが日常生活でも重要な役割をしていることがわかった。「環境保全」など今はもう呼びかけるだけの時代ではないのです。実行すべき時代であって、壊すのも直すのも一人一人がどうするかです。
■農薬も使わずに家の庭で、にがうりがものすごく大きくなったのが証明といえるでしょう。他の人にもEMの素晴らしさを教えて今の環境をどんどん良くしていきたいです。
■おばあちゃんは、私におじいちゃんのことを話してくれている途中に、電話のさきで泣いているのがわかりました。きっと、おじいちゃんが帰ってきた時のことを思い出したんだと思います。おばあちゃんは言っていました。「あなたたちが、ちゃんと戦争のことを勉強してくれてうれしいよ。」って。感動しました。
■何本かのEMボトルを作り、お風呂やトイレなどに利用した。このEMが世界に広がりいろいろな人に使われ、誰もがEMを知っているような世界になってほしい。今回の体験により前よりずっと地球のことを考えられる様になった。
■これからの大人の役目というのは、子供たちに勉強だけでなく「生きていくために必要なこと」を教えて残していくことではないでしょうか。私たちが日本を、世界を良い方向へ持っていかなければならないのです。このことを、周りの人に伝えたいと思う気持ちでいっぱいになりました。私は将来、人の役に立つ仕事がしたいと思い始めるようになりました。本当に「ホンモノ勉強」をしました。今の気持ちは明日への希望でいっぱい、という感じです。

11 まとめと考察
いままでの環境教育では、オゾン層破壊、炭酸ガス、酸性雨など絶望感や危機感のみを子供達に植え付けてしまう。環境教育で一番問題なのは解決策がないことであり、一応リサイクルのことなどを話し、せいぜい牛乳パックを集めたり空缶をつぶしたりの延命的な対策が主流になっている。みんなが不安を持っていながら、どうしたらいいかという答えを出し切れないまま、半分諦めている状態である。               
EM技術を使うと、米も野菜も果物も低コストで従来の収穫量の数倍もとれるようになる。この技術は、生活化することが一番のポイントで、そうすればいつの間にか楽しみながら環境もきれいになり、資源もリサイクルできる。              
いままでは子供達に対して、こんなに大変なんだよと絶望感を与え、あるいはリサイクルということで、ちょっとごまかして授業をしていたのが、それが本当に解決するんだって言える様になった。  
EM技術をはじめ本物技術を日常化すると、地球は素晴らしいんだとか、変わっていくんだということが理解されるであろう。そうすれば未来に生きる夢が、子供達の中にも生れてくるに違いない。



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