特集 EMでつなぐ環境活動と福祉
掲載記事:「えむえむ関東55号」より
=EMネット神奈川発=
重い障害でもできるEMボカシ作り
身体障害者施設「空とぶくじら社」

社会福祉法人施設「空とぶくじら社

「空とぶくじら社」 内部

 横浜市旭区市沢町(相鉄線和田町下車)にある身体障害者施設「空とぶくじら社」。どんなに不可能と思えることでも、願えば叶うー鯨だって空がとべるさーというすてきな名を持つこの施設は、1987年横浜市が委託する社会福祉法人施設として開所。その人の障害の重さや種別を問わず、障害の重い人には工夫と協力で作業をすることをモットーに障害者の社会参加を進めています。現在、18才から70代までの69人が通い、その障害の程度に応じて、ダイレクトメールの印刷、発送作業,紙すき、段ボールの組み立て、ステンレスと銅線の区別作業などを行っています。これらの作業にEMボカシづくりが加わったのは、今から約10年前のこと。重度の障害を持つ人たちに適し、車いすでも出来る作業を考えていた時に平塚市の作業所「ありんこの会」がEMボカシを製造していることを知り、指導員が研修をうけたことに始まります。
この取り組みに立ち上げから担当している主任の清水徳彦さんは、「不況で仕事も減り、なにか仕事をと模索していた時でしたが、このEMボカシづくりは環境問題にも貢献できる、障害者の社会参加にはもってこいの作業でした」と振り返ります。清水さんは、生ごみリサイクルの先進地である可児市や我孫子市などを視察。大きな視点から、この作業が社会に必要なものであると確信していました。


生ごみ肥料の入った花壇
まずは、自家製EMボカシで施設内の残飯リサイクル
 作業所で製造したEMボカシを使い、まずは給食の残飯を堆肥にして花づくり。花栽培を行っている施設にもEMボカシを使ってもらった結果、土がほかほかになり元気な花が育つことが分かりました。1995年、販売開始。
日曜大工店や生活クラブ生協、生協など、飛び込みで営業に回り、少なからず販売ルートも開拓できました。しかし、今でこそ、横浜市では中田宏市長の下、横浜ゴミ0が政策として掲げられていますが、当時は焼却炉の余裕もあるとして、ごみを減らす必要なしとこのEMボカシも市で取り上げられることはありませんでした。
 それでも、授産施設でのEMボカシ作りは横浜市広報、神奈川新聞、ケーブルテレビなどマスコミが動いたこともあってか、市民の関心を引き、当時、年間100万円を売り上げるほど好評でした。障害者の「生きがい」と環境問題という社会の要請が符合して、幸先のよいスタートだったようです。

作業道具に工夫・品質の向上に努力
 それから、約10年。売り上げは下がったものの安定した収益があり、立派な作業種目として作業所に定着しています。この間、作業を行なう人に適した道具の工夫、品質がよくなるような作業過程の見極めなど、創意工夫ができる指導員がいたことも継続できた重要なポイントです。現在、EMボカシ作りの担当指導員、坂元志穂さんは、「みんなができることをして、ボカシができあがっていく。あまり、無理をすることがないのがいいと思う」といいます。手を上から下に下ろせる人は、それが楽にできる器具を平らではボカシを混ぜ合わせるのが難しい人には、傾斜をつけた箱の用意をするなど、随所に工夫がみられます。

車椅子でも出来るEMボカシづくり

障害にあわせた作業道具
 EMボカシの作り方は、米ヌカ30Kgに勳炭800g。EM活性液を加えて攪拌して、化粧ケースに入れて1週間寝かせ、さらに密閉バケツに入れ替えて5週間。それから、乾燥機にかけます。天候の具合で、ボカシの乾燥具合が平均化せず、品質のばらつきがでるという悩みを解決したのが、30万円で購入した中古の業務用乾燥機。1回につき3s、4回転して1時間半で12kgのEMボカシが出来上がります。今のところ、目詰まりもせず、順調に作業が進んでいます。店頭販売価格は、500g250円。「本当は、520g入っているんですよ」と坂元さん。年間およそ1.5tのボカシを製造しているのですから、立派なボカシ工場です。

地域との交流・農業作業で障害者も行動する
 最近では、近隣の小学生が環境学習の一環で訪れる機会が増えたそうで、このEMボカシコーナーでは、「くさい」と言いながらも、興味森々で見学していくそうです。作業する人たちも見学にはすっかり慣れて、坂元さんがEMの説明をすると、すかさずEMのボトルを持ってきてくれたりして、とても協力的です。
 昨年には、このEMボカシが旭区の逸品に選ばれるという快挙をなしとげました。区内にある様々な業種からユニークな逸品を認定する街おこしの一環で、肉やさんの人気コロッケなども一緒に選ばれています。また、マスコミを通じて、「空とぶくじら社」がEMボカシ作りをしていることを知った近所の有機栽培農家である桜井章則さんが、作業所にボカシU型の製造を依頼。そうした関係から、桜井さんが作業所に農地を解放してくれることちなり、入所者がナス、キュウリ、スイカ、ジャガイモなどを栽培しています。実際に大地に触れる農作業は、リハビリ効果だけではなく精神的な安定をもたらしているようで、大きな励みともなっています。有機栽培の作物は、作業所玄関先で販売され、来所者に喜ばれています。「EMボカシを通して、地域の循環の輪ができてうれしい」と清水さん。これからは、環境問題に関心のある市民と手をつないでいくのが目標だそうです。所内のベランダに置かれたプランターの花は、どれもいきいき美しく、EM生ごみ発酵堆肥の効果が一目瞭然。イチゴの季節には、摘み取る間もなく、直行でみんなの口に入るぐらいおいしいイチゴが収穫できるとか。
 福祉作業所の粘り強い取り組みが、地域を変えるかもしれないーしかも一番障害の重い人々の労力のおかげで作られたEMボカシで。
雨上がりの青い空、鯨が1頭楽しげに飛んでいるように私には見えました。
(報告:小野田)

ボカシの乾燥に威力を発揮する
業務用の衣類乾燥機の前で
   
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