特集 環境教育
えむえむ関東87号より
=EMネット山梨発=
学校事務室から環境啓発活動
東久留米市立 大門中学校 武田和子

大門中学校の概要

 本校は、昭和49年4月に東京都東久留米で5番目の中学校として開校し、今年で36年目を迎えました。6月の運動会、10月の学習発表会、3月の合唱コンクールなど、学校行事がとても盛んで活気に満ちた学校です。日々の学習活動はもとより、生徒活動・部活動では、ほぼ全員が参加し、大きな評価をいただき、地域の学校として社会に羽ばたく人材を育成するため様々な教育活動を推し進めています。
 
大門中学校の校章のいわれ

大門中学校の校章は、昭和49年創立当時の全校生徒、職員、父母からデザインを募集し、その結晶として昭和50年3月16日に制定されました。大門中の大門を図案化して中央には、中学校の中を配し、大門中の大の五つの先端は、本校創設期の教育目標、健康・知性・誠実・努力・素直さを表し、同時にかぎりない若さと発展を示しています。大門中の生徒が、この校章を胸に輝かせて、希望と誇りに満ちあふれ、たくましく知性ある豊かな人間に成長していくことを祈念してまいります。

学校の沿革

 学校は東京都の西部に位置し、市の公立の中学校です。黒目川と落合川の合流地点に位置した大門中学校は緑と自然に囲まれた学校で、礼儀正しい中にも活力ある生徒が大勢いる学校です。 

環境活動とEM活用のきっかけ

 一昨年度(平成18年度)まで、市内小中学校のプール清掃は東久留米市が業者に委託していました。しかし、財政難の余波を受け平成19年度から小中学校に配置されている用務主事が受け持つ作業とされました。初めて職員の手で行われたプール清掃は、悪臭とヘドロとのたたかいでした。市から提供された洗剤は「一個のクレンザー」だけです。
 丸々二日間の大変な作業に、何とか簡単に汚れの落ちる洗剤はないものかとインターネットで探していたところ、EMという微生物資材でプール清掃ができる情報を得てNPO法人EMネット埼京の上山さん達に色々と教えていただきました。

EMを使用したプール清掃

 EMのプール清掃に対する効果等を理解し、実際にプール清掃に利用することとしました。そして実際に投入を計画して行いました

EMの投入
平成21年6月16日に清掃を行いました。
体育委員の生徒全員で清掃
第1回(秋)投入(初年度平成19年10月16日)
 EM活性液  150L
(EMネット埼京殿の紹介者より調達)
 EM米のとぎ汁発酵液作製
 約50L(10月3日〜16日)
体育委員24名と職員に呼びかけ、各家庭から米のとぎ汁を提供してもらい20倍液を作る。

第2回(春)投入(平成20年4月4日)
 EM活性液  100L
(EMネット埼京殿の紹介者より調達)

第3回(春)投入(平成20年5月14日)
 EM米のとぎ汁発酵液作製 
 150L(5月2日〜14日)
 1年生と3年生、職員に呼びかけ、家庭から米のとぎ汁を提供してもらい50倍  液を作った。

プール清掃(平成20年6月16日・17日)
 清掃作業者は用務主事(2名)・事務主事(2名)・副校長・教員(3名)計7名で実施。 初めて取り組んだ結果として、プールの状況はプールの水は今までで一番澄んでいた。昨年ひどかった悪臭とヘドロは無く、「ミジンコ」や「ミズムシ」が沢山泳いでいた。最初黒い汚れと思っていたプール槽四隅の黒ずんだ水は、「ミジンコ」などの動物性プ ランクトンのためであった。

第4回(秋)投入(平成20年10月)
 EM活性液 160L
 (EMネット埼京殿の紹介により調達)
 EM米のとぎ汁発酵液作製 
 約50L (学校で作成)

第5回(春)投入(平成21年4月)
 EM活性液 100L
 (EMネット埼京殿の紹介により調達)
 EM米のとぎ汁発酵液作製 
 約50L (学校で作成)

プール清掃(平成21年6月16日)

第6回(秋)投入(平成21年10月28日
「EM活性液」 100L投入
「米のとぎ汁EM発酵液」(学校で作成)と地域の「多摩の自然環境を守る会」より提供の「米のとぎ汁EM発酵液」を投入

第7回(春)(平成22年4月上旬)
「EM活性液」投入
6月中旬  プール清掃
尚、上記取り組みにあたって事前に「学習発表会」でEMを活用した環境浄化について、教員はもとより児童生徒、父兄、関係者に詳細紹介いたします。

平成20年度のプールの様子
20年度 清掃前のプールの様子 20年度 清掃前のプールの様子
底のヘドロが自然に低いところへ…
20年度 清掃前のプールの様子
ラインも昨年に比べはっきりみられるように
なっている。
20年度 清掃前のプールの様子。
沢山の水生生物が見られる。
側面にへばりついた藻も初年度(19年)
よりも容易に落ちるようになりました。
側面の藻は水が残っている状態で
ブラシとタワシで除去。
底面部は「ポリッシャー」で洗浄
今までのような臭気(青臭さ)はまったくありませんでした。又、コケや藻等もあまり苦労せず除去できました。特に昨年に比べて容易に落とすことができ、排水も思ったより早いので清掃時間が短くなり楽になりました。
平成21年から体育委員の生徒24名も一緒にプール清掃に参加してもらい、微生物の力で水の浄化ができることを体験してもらうことになり、生きた環境学習になったと思われます。

他の学校の状況

 大門中学校以外に第二小学校、第五小学校でも同様に業者による清掃から学校独自でのEMによるプール清掃実施されました。プールの材質や周囲の落葉流入などの環境、EM発酵液づくりの経験、「米のとぎ汁」入手の難易、発酵容器の有無など、投入回数などで状況や費用も異なっています。

地域や他の環境団体とのかかわり

 大門中学校のプールは校庭外に隣接していてもともと市民の皆さんが利用されていたものでそれを学校が譲り受けたものです。周りには落葉樹の樹木があり、他の学校と違い汚れがひどい環境にあるのかもしれないと思います。今年の東久留米市主催「環境フェステバル」に出かけたときに偶然「多摩の自然環境を守る会」の方と出会い、EMで近隣の落合川の支流の河川浄化を進めている団体で、10月に予定しているプールへ投入する「米のとぎ汁EM発酵液」を提供いただけることになりました。又、団体の会長さんは地域の「青少年対策協議会」の役員で「地域の子供たちを見守る活動」もされている方でダブルの偶然のラッキーな出会いで地域の協力者とわかり、継続期待できることに喜んでいます。
 
PТAや父兄とのかかわり

 1〜3年のクラスの体育委員保護者に協力依頼文及び「米のとぎ汁」回収用のペットボトルを配布し協力をお願いしています。とぎ汁持参担当の生徒の保護者の中に1〜2名程EMをご存知の方がいて、「家のものを足しておきました」とメモがついているものがありました。又、PТAの役員会でも質問された方や実施されている方もいるようだと聞きました。担当生徒の家庭で無洗米の家庭もあり、隣の家から貰ってくる生徒もいるようです。さらに忘れた生徒のお母さんが「持たすのを忘れました」と学校へ持参してくれるお母さんもおられました。
 
活用しているEM資材の調達

 EM1や糖蜜など資材の費用は教育委員会からプール清掃としての予算と、児童や生徒が参加することが条件で補助される「特色ある学校づくり」の予算というものがあり、大門中学校では花の栽培、野菜づくり、ホタルの育成など「自然環境づくり」として計画を提出し、EM1や糖蜜の原資材などの費用を賄っています。
 
生徒の反応や感想など

 平成20年度からは体育の先生の意見もあり、プール清掃に体育委員1クラス2名、各学年4クラス計24名の生徒が参加することになりました。「このEMってどんな微生物?」「どうして水がきれいになるの?」など関心を持つ生徒がいました。
 さらに、平成20年4月からは全校生徒が学期毎に交代でEMによるトイレ掃除を始めました。用務主事と一緒に生徒用のトイレを担当。EM活性液を入れたペットボトルを設置し、別の噴霧器のついたペットボトルに入れ、薄めて掃除をしてもらっています。トイレの臭いが消え、特に毎年、夏休み明けには必ず強烈なくさい臭いがするのですが、ある先生から「今年はにおいませんね!」との感想を聞きました。生徒たちに薬品を使わない安全なトイレ掃除に参加してもらうことで一層環境意識が高まっているのではないかと思います。

今後の課題

 環境問題が「世界的に緊急の課題」といわれているとき、EMを使った「環境にやさしいプール清掃」は行政としても、環境学習としても取り組んで行く価値の高い活動だと考えます。とりわけ東久留米市がすすめている「市内に残る貴重な清流を保全して行く活動」にとっても有効な環境浄化活動となって行くと考えられます。「用務主事の作業」として位置づけるのではなく、「身近に環境問題を考えることのできる生きた体験学習」になったと考えられます。ヘドロや悪臭がないだけでなく、「洗浄剤」を使用しないので、児童生徒が清掃に参加しても薬剤アレルギー等の問題も殆ど無く安全なことが報告されている。環境問題が地球的な課題となっている現在、将来を担う生徒たちにとっての環境教育に大いに役立つものであり、「EMによる環境学習」としてより多く授業に取り入れてもらえればと強く願っています。
くさい臭いから解放された生徒用トイレ。
掃除は美化委員の生徒が
定期的にEMで清掃。
トイレに常備されたEM活性液と
簡易噴霧容器