特集 環境教育
「えむえむ関東111号」より
=EMネット栃木=
環境学習をとおした未来への投資に向けて
EMを活用した環境学習の効用
NPO法人足利水土里探偵団 理事長 大島 由臣


はじめに
 今年3月に、38年間勤めた教員生活を終え、今まで積み重ねてきた経験と知識を社会の中で生かせないかを考えていた時に足利水土里探偵団事務局長である中庭三夫氏の依頼を受け理事長に就任しました。また、地球環境共生ネットワークから環境学習の推進に力を貸してほしいとの依頼を受け、顧問という形で微力ながら活動をしています。これは、比嘉先生の言う「これまでの活動は教育という面での活動が弱い」という指摘から、EMをツールとした環境学習の推進を図ることがねらいです。学校にEMを導入するのに、どんな経路があるのか。また、どのような説明をし、教育課程のどの部分で活用できるか。さらに、導入にあたっての支援をどうするのかを今年度中に一つの形として全国に配布する予定になっています。
 EMとの出会いは、現在も活動を続けている「葉鹿エコクラブ」からですので、今年で16年になります。その経験をもとに今後の活動について私見を述べようと思います。


これからの活動について
 現在、NPO足利水土里探偵団では、以下の活動を行っています。
(1)各種講習会
  ①米のとぎ汁発酵液の作り方・使い方
   生ごみ堆肥の作り方
  ②EMぼかしの作り方
  ③EM廃油石鹸のつくり方
  ④布ぞうりの作り方
(2)環境浄化活動
   EM活性液による厨房の浄化槽改善
(3)各種製品の販売
   布ぞうり・EM石鹸・EM野菜など
 これらの活動は、中核をなすもので今後も継続して地道に行っていく必要がある。

 これらに加え、今後の方向性として考えているのが標題にあるとおり「環境学習をとおした未来への投資」である。
 10年以上子どもと接するなかで、「EMをツールとした環境学習は、確実に子どもの環境意識を向上させ、自ら環境問題を考え行動する姿勢を育てることができる」
 公教育の中で、EMがツールとして効力を発揮する分野は、特別活動の時間や総合的な学習の場であるが、各学校においてはそれぞれ全体計画が策定されており、年度途中にEMを使った活動を組み込むには難色を示すものである。従って、次年度を見据えて行動することが肝要である。また、直接的なものでなくとも、間接的にEMの教育的効果を知ってもらうという手立ても必要である。
 長年子ども達と共に環境学習を推し進め
てきた経験から、EMの教育的効果は図のとおりである。



 今年、テレビなどで「かつて経験のない・・・」という言葉を何度聴いたことだろう。今後、この言葉が普通になってしまうことは疑う余地はなさそうである。その原因の一端が人間生活にあることも周知のとおりであるが、これからの時代を担っていくのも今の子ども達であることは間違いのない事実である。
 小さい時期から、自然に触れ、環境について考え行動できる子どもを育てることは余りの人生を生きる我々の役目の一つとして自覚して行動したいものである。
 
 右の写真は、海の日EM団子一斉投入に向けてEM団子の学習を終えた子ども達が喜んでEM団子を作っている様子である。この活動を通して確実に子どもの心に自然を大切する気持ちが育っていくことと思う。

 地球環境激変の時代の中で生きていかざるをえない今の子ども達に、伝えていかなければならない事は沢山ある。その一つとしてEM活動をとおした環境学習は、未来の子ども達のライフスタイルを変えうるものだと思う。
 下の写真は、ボカシ作りの様子であるがこの活動にしても、ただ作るのではなく子どもの発達段階に即して環境との関連をしっかりと学ぶ場にしていくことが大切である。その学びの場が将来の子どもの環境意識の向上につながり、より一層環境改善に積極的に取り組む姿勢を養っていくものと考えられる。
 

 さらに理想を言えば、下の写真のように親子で学ぶ場があれば最高である。親子で学ぶことで、親子の会話の場を提供するだけでなく、親子で環境について考え、実践できる。このような場の設定は、学校の中にEMを導入することより比較的簡単である。その理由の一つが、学校のカリキュラムではなく、PTA活動の一つとして企画しやすいからである。
 



ある小学校のPTA活動での様子である。PTAの組織の一つとして図書文化委員会という委員会の活動の一つとして夏休みに依頼を受け実施したものである。
 これらのことを考え、今後の活動として足利水土里探偵団の活動拠点である「エコサロン」を開放し、子ども達が保護者と一緒に環境について学び、実践出来る場として行きたいと考えている。

 今後の方向性は、下の図のようになるが具体的な取り組みはこれからである。エコサロンの広さから考えても、10家族程度、年間12回の活動を考え実施していく予定である。
この活動を一つの取りかかりとして、各小学校のPTA活動をはじめ、公民館事業にも参入できればと考えている。また、足利にはユネスコ学校もあるので、この中でも活動できれば少しずつではあるが広がりをみせるのではないかと考えている。まだまだ計画段階でいろいろな問題も含まれているが、まずはスタートしてみてからと考えている。来年度には、よい報告ができるようにしたいものである。





終わりに
 EMをとおした環境学習の大切と、今後の足利水土里探偵団の新たな取り組みについて簡単に述べたが、これからのEM活動は、単にEMを作り投入するという活動から、子ども達の環境意識の向上に向けてEMの果たす役割をしっかりと考えることが大切であると考えている。そのためには、EMを指導する我々の下記のような環境問題に対する見識の向上が必要であると思う。
 ①地球温暖化に対する知識
 ②生物多様性に関する知識 
 ③生態系に関する知識
 これらを総合的に考え、その中でEMが果たす役割をしっかりと認識することが大切である。プールや河川にEMを投入する前に下の写真のように生物調査を子どもと共に実施し、生態系について学ぶ場を提供している所は決して多くないように思う。
 つながりをもってEMを活用するこれらの地道な活動が、未来への投資につながるものと確信している。