特集 生ごみの有効利用
えむえむ関東90号より
=EMネット山梨発=
    進展する笛吹市バイオマスタウン事業と市民の活動
                   
              山梨県笛吹市 エコふえふき代表 鮫谷陸雄
      

はじめに

 我が笛吹市は 桃・ぶどう日本一の生産地である。この私も桃・ぶどうの生産者の一人で、比嘉先生の「地球を救う大変革」を読んで以来17年目のEM活用による栽培者である。
 平成の大合併で、4町2村で人口約7万人の笛吹市が誕生したが、農業と観光が主な産業形態である。
 新市誕生以来2期目を務める荻野正直市長は、将来にわたって水資源を守るために「食と農と微生物によるバイオマスタウン構想」を打ち出し、地域循環型社会を構築しながら日本一の桃・ぶどうの産地を維持していこうとしている。
 資源の乏しい笛吹市では 各家庭や温泉地から出る食物残渣と果樹栽培の剪定枝位しかバイオマス資源がないのが現状である。
 ここでは 我々市民が市の事業にどう関わって生ごみの有効利用事業等が推進されてきているかご報告したいと思う。
日本一の桃 EMボカシづくり

エコふえふき

 私は合併前から 各町村の食生活改善推進委員会、消費生活研究会、PTA等の団体から招かれて、生ごみのリサイクルやEMを活用した農業等について話す場を与えられ、普及活動を行ってきた。
 合併後、平成18 年度からは市では「やってみるじゃん53減量」をスローガンに、ごみ減量53%を目指して努力し、4年目の現在当初より約30%の減量までは達成できてきている。が、それ以上の削減は頭打ちの状態で目標達成は難しいようである。
 担当のごみ減量課は 生ごみの減量なくしては、厳しい分別収集を行っても目標は達成できないと考え、平成17年度から旧町村で実際に活動している会の代表等により「笛吹市生ごみ減量検討委員会」を立ち上げた。
 家庭用生ごみ処理機等補助金交付事業により購入費の2分の1以内の補助を行い、17年度以降家庭用生ごみ処理機、EMボカシ処理容器、コンポスターで毎年300件近い助成が行われている。
 EMボカシ製造事業では、5人以上の登録団体に生ごみを堆肥化するためのEMボカシ材料を助成する。当初50団体でスタートしたが、年々希望団体が増え今年度はおおよそ50万円の予算で、70団体がEMボカシ各120kg分の助成を受けている。
 この団体から各地区のリーダーとして活躍する代表委員(現在17名)を選出し、生ごみリサイクルネットワークとしての「エコふえふき」を結成した。
 初年度(H17年度)は基礎講座として@EMとは、A生ごみの堆肥化、B農業への活用を主に3講座を連続開催。次年度からは後述バイオマス関係の学習会に参加する形とした。
 市の助成を受けてのI型EMボカシづくりは、私が市の一括委託を受ける形で、資材の調達、場所・機械器具の準備、製造補助、小学習会の開催等を行っている。
 EMボカシづくりは 春から秋にかけての農作業の手のすく時期に旧町村単位に日を決めて行っている。
 エコふえふきの会員はおおよそ400名で、1回に数十名が参加してのEMボカシづくりはとても賑やかで楽しい。
 
収穫間近のEMサトイモ 1株10〜30kgになる
さらにこの場で新たな交流や情報が得られ、実践の場が広がっていくようである。
 食物残渣は 1家庭1日約1kgの排出とすると、会員全体では1日400kg、1ヶ月12t、1年約144tとなる。これがEMボカシの活用で、発酵肥料になるのであるから、数字的には表れないが、ごみ減量に大きく貢献している。
 実際には モデル地区での生ごみ処理事業、生ごみ処理機やコンポスター処理、更には個人的にボカシあえをしている人、農地に直接還元する家庭など 住宅密集地を除いては多くの家庭が自家処理していると思われる。
 ごみ減量が30%で頭打ちになっているのは、市民の普段からのごみ減量への取組みがあるからであろうと推測されるが、エコふえふきのメンバーが指導者となり、各地区ごとに食物残渣の堆肥化と有効利用をより広く普及推進していかねばと思っている。

バイオマスタウン事業

 1.生ごみの発酵・堆肥化 2.果樹剪定枝のチップ・堆肥化 3.廃食油の燃料化、の3つの柱の下3年度にわたる実証実験が国の助成も受けながら約1億の予算を投入して行われてきた。
 私は農家代表のバイオマスタウン構想策定委員として、実際に有用微生物EMで農業をする立場で参加・協力してきている。事業は農林振興課の3人が担当して推進している。
 生ごみは、生ごみ処理機「蘇生利器」で堆肥化される。2つのモデル地区から回収される生ごみはバイオマスセンターの大型蘇生利器で処理、1団地と7つの市内小中学校ではそれぞれにやや小型の蘇生利器が設置されていて、その場で堆肥化され回収される。この生ごみ発酵堆肥はEMスーパー堆肥と名づけ、市民に無料提供される。
 ペースト状で使い難いと思われたが、使ってみるといやな臭いもなく、土が軟らかくなり、おいしい野菜が出来ると評判で希望通りに配布できない状態である。
 2つのモデル地区での生ごみの回収量は年約18t、蘇生利器で製造時に米ぬかやEMボカシT型を入れるので、堆肥製造量は21年度は約23tに達すると推定される。学校は設置時期が一斉でなく、学校でも活用される時もあるので、年度による集計値として出しにくい現状にある。
 果樹剪定枝チップ化事業は 多くの農家が焼却処分しているものを、地球温暖化防止、バイオマス資源としての有効利用を考え、チップ化するためチッパー共同購入に助成金を出すものである。5人以上のメンバーで申請すれば、100万円相当の機械に半額の助成がつく事業である。
 現在112グループが活用し、堆肥化を進めている。これは農家全体の1割に当り、個人購入分も含めれば、徐々にではあるがチップ・堆肥化が進んできている。
 この堆肥化を後押しするのが、「EM活性液製造装置ニ千倍利器」によるEM活性液の無料配布事業である。
 仮設バイオマスセンターで、我々EM農業実践者がボランテアで週1回の割りで百倍・二千倍EM活性液の仕込み・排出を行っている。週2回の配布で 2tの二千倍EM活性液があっという間になくなる。活性液仕込みはすでに百回を越えている。
 このEMスーパー堆肥とEM二千倍活性液は、市主催または市が認める団体主催のEM学習会に参加して、EMを理解し市に名前が登録されないと配布は受けられない。
 学習会は「土づくり学習会」と題し、基礎編では市担当によるバイオマスタウン構想の簡単な説明と私によるEM活性液とEMスーパー堆肥の活用法を、応用編ではより具体的な学習会とし、失敗のない活用・普及を目指している。現在までに 比嘉先生による特別講演を含めて初年度4回、次年度7回、今年度6回の学習会を開催し、1000人を超える大勢の市民が参加している。
 配布を受けた2つの資材は 現在はEMの効果を実証するものであれば活用の仕方は拘束されない。
 時々センターで活用者と話をすると、時にはEM活性液を濃く使いすぎて失敗したとの例もあるが、この事業は好評で、EMの良さが認識され、その効果は上々のようである。
 エコふえふきでは、このEMスーパー堆肥で本庁舎前の細長い花壇に春にサルビア、秋にビオラを植栽しているが、3年目のビオラはすばらしい花を咲かせている。
 この事業は今後も継続されるが、最終到達点は近い将来にバイオマスセンターを建設し、有用微生物を活用しての食物残渣や剪定枝等を堆肥化し、善循環型社会を構築することにある。
 市は以上の事業も含めて、市の環境の将来像を実現していくための最も基本的な計画「環境基本計画」を市民ワークショップを設置し、市民の意見を広く反映させて次年度には策定しようとしている。
 私はこれからも一市民として大いに支援し、活動して行きたいと思っている。
EMスーパー堆肥をつかった市役所前の歌壇に咲く元気なビオラ(H22.3)