特集 生ごみの有効利用
えむえむ関東90号より
=EMネット埼京発=
    NPO法人くまがや有機物循環センターの活動
                   
              有限会社 フォレスト代表取締役 竹井 禎
      

NPO法人くまがや有機物循環センターの概要

堆肥作りの拠点「大麻生堆肥センター」
 「NPO法人くまがや有機物循環センター」(以下循環センター)は平成9年に熊谷市と消費者団体が開始した「レインボー熊谷プロジェクト」が前身です。生ごみ・刈り草・野菜収穫残渣等を有効な資源として堆肥化し、慣行農法から有機農業へ転換しようというプロジェクトでした。
 平成11年から3ヶ年間埼玉県の補助を頂き熊谷市と共に「彩の国 有機100倍運動事業」として展開、畑トラスト(有機農産物の有効な循環を願い消費者自ら出資する(4,000円程)有機農産物の購入制度)環境自治体を目指す活動を行ってきました。
 平成12年より生活クラブ生協等消費者グループが中心となり熊谷市と共同し「くまがや有機物循環研究会」が発足され、地産地消システムの構築を目的として活動をしてきました。
 「有機100倍運動事業を契機に農家や農業関連団体、行政、大学、流通業者、獣医師、消費者グループがこの研究会に参加して頂きました。さらに、食品流通局から採択された『ゼロエミッション』事業により、学校給食残渣や一般家庭の生ごみ、河川敷の雑草を家畜糞尿(肉牛牛糞)に混合した堆肥作りの実証試験を行ってきました。
 食品系残渣を堆肥に混合することで、堆肥の質が良質化することが分析することで理解されました。また、消費者グループによる食味実験で、この堆肥を施した圃場で栽培された農作物(ホウレンソウ・ブロッコリー等)は大変良い評価を受けました。農作物に含有される亜硝酸態窒素が慣行農法と比較し少ない事も実証されました。(団体の紹介文から引用)」
 平成15年より現在の「循環センター」として継承され、熊谷市の学校給食残渣・一般家庭系生ごみを回収し堆肥化を行い循環型社会構築に貢献をしている団体です。
 堆肥センターに牛糞を提供されている前理事長の平社進氏が昨年11月に勇退され、新理事長として褐F谷清掃社の西野則幸社長が就任、私も新副理事長として総合技術部門責任者としてまたEMを有効利用している関係者の方々も就任して頂きました。

現在までの活動紹介

 
生ごみを回収・運搬
堆肥センターで牛糞と混合
堆肥化し販売
グローバリゼーションの市場経済の大波を受けながら有機農業をキーワードに地産地消を進める事は大変なことです。けれども、国際社会の動向は食料主権と有機農業の推進にシフトしています。
 「循環センター」は、熊谷市大麻生地区の堆肥センターで堆肥を作成しています。ここへは肥育牛糞尿、JAカントリーエレベーターからの籾殻、学校給食センターの食品残渣、一般家庭からの生ごみ、河川敷の雑草、落ち葉などの原材料が運搬され、切り返し作業を行い堆肥化されています。できた堆肥は市内の「ふれあい農園」をはじめ、農家、家庭菜園、学校花壇等に利用されています。
 地産地消には地域社会の理解が必要です。その為、年に数回「循環フォーラム」を主催し、啓発活動を行っています。
 地域の土壌と栽培作物に適した堆肥作り、堆肥化以外の有機物の有効利用などの課題にも取り組んでいます。
 地産地消を進める上で、荒川流域の人の暮らしと経済を切り離すことはできません。熊谷市を拠点としながら、荒川流域での循環構築を視野に、長期的な展望を持って活動を進めています。(以上、団体紹介HPより引用)

生ごみの有効利用事業について

 生ごみと表現されるように、家庭や食堂・レストラン、スーパー等小売店、食品加工工場から出てくる残渣類は食品系廃棄物とされています。また、もう少し大きく見ると有機性廃棄物となります。有機性廃棄物となると、畜産糞尿や排水施設汚泥、間伐材、海産物残渣等も対象となります。
 このような廃棄物に対する規制をしている法律が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」です。「廃掃法」とも略称されます。ごみの急増が社会問題化した1991年10月に改正されました。廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物に分類し、排出者の責任による適正な処理を定めています。また、一方では地球温暖化抑制や、有機性廃棄物をバイオマス(再利用資源)として「食品リサイクル法」等により有効に利活用される事を促しています。
 この廃掃法を順守する事が事業化を図る上で基本的な事項となります。

食品系廃棄物の分類として
@一般廃棄物・・・各市町村管轄
      家庭系
      事業系(卸業・小売業・食堂)
A産業廃棄物・・・各都道府県管轄
      各生産者・食品加工業
      畜産廃棄物・汚泥等
に分類され、各廃棄物取り扱うための許可が必要となります。
     
廃棄物の取り扱い(大要)

 「循環センター」は、設立当初より一般廃棄物運搬許可と中間処理業(堆肥化)の許可を熊谷市より受け事業を行っています。この許可証により行政に廃棄物取扱企業として登録され、委託事業が行えます。この許可も取扱う廃棄物の種類により細別され法規制する事で、不法投棄等環境への悪影響を抑制しています。許可を取得する事は大きなハードルではありますが、廃棄物を適正に処理をしている証となるので取得をお勧めします。
 現在も熊谷市より給食センター食品残渣・一般家庭生ごみ(約200戸)を回収・処理の委託を年間200万の予算で行っています。         
 
今後の展望

平社牧場の「はまさり牛」
 「循環センター」は前述のように、地域に密着する形で地産地消を基本とした循環型社会形成に取り組んできました。その結果として埼玉県・熊谷市等のバイオマス有効利用事業としての評価も頂き紹介をされるようになっています。
 また、平社氏が推進している堆肥を飼料米生産に利用し自農場(肥育牛)で飼料で利用する畜産業も絡めた循環も有効な利活用です。

 今後の課題として現在の仕組みをさらにレベルアップを行い、活動的なNPOにするため下記のように計画を立案しています。
@食品廃棄物事業系の取り扱い
 現在は熊谷市委託の生ごみのみを扱っているので、事業系も扱い仕入を拡大する
Aたい肥の良質化
 農家から購入をされる良質な堆肥生産。具体的には減容率の高い有用微生物利用、EMによる熟成仕上げ
B自社堆肥利用の農業生産
 自然農法により安全安心な農作物の生産及び農業技術の指導・普及を行う農業事業の推進
C農作物の流通
会員方々と協調して安全安心な農作物を流通させ、医食同源を実践出来る社会に貢献
D飼料米の普及
 畜産事業者に地産飼料米を利用した、安全安心な畜産に貢献
 この様な計画を元に「NPO法人くまがや有機物循環センター」をより活性化し本来の循環型社会形成に貢献していこうと考えています。 

おわりに
 高齢化社会を迎えている最中、日本全体に渡る不況によって消費経済は困窮しています。
今年2月に開催された関東EM普及協会主催の「第2回有用微生物応用エコ活動発表大会」で比嘉教授が講演されました、「今までの工業経済を終焉し、今後は農業を主体とした観光産業も必要だ」とのご意見が実際のものになることが必要なのではと実感しています。
 後世に残していける社会の構築、後世に負担をかけない方法を実践して、供に歩んでいける大人でありたいと思っています。
 最後に「NPO法人くまがや有機物循環センター」に今まで貢献していただいた平社氏並びに根岸理事に敬意を表し終わりにします。