生ごみの有効利用
 
「えむえむ関東104号」より
=EMネット神奈川=
養護学校作業学習でのEM生ごみリサイクル
NPO法人EMネット神奈川

 
 
 
 
 
神奈川県立小田原養護学校は、小田急線螢田駅(ほたるだえき)から徒歩8分。足柄平野ののどかな水田地帯が広がる中にあります。当校は、昭和53年開校した知的障害教育部門と肢体不自由障害教育部門を持ち、小田原を中心にした神奈川西湘地域の小中高校生合わせて251名が通っています。何年か前、この学校の在校生が、「生ごみリサイクルは、うちの学校でもやっているよ」と教えてくれたことがあります。今でも継続されているのかとご連絡したところ、しっかり受け継がれているとのことで、さっそくお訪ねしてきました。夏休みに入り、生徒たちの姿は見られませんでしたが、担当指導教諭である岡橋滋先生にお話を伺うことができました。
 

121名が在籍する高校部(知的障害教育部門)では、数学、国語、音楽、体育などの教科授業とともに作業学習8単位が組み込まれています。火曜日と金曜の作業の時間には、「エコ班」や「クリーン班」、「農園芸班」などにわかれて活動します。「エコ班」は、生ごみやアルミ缶、牛乳パックなどのリサイクル。リサイクル作業工程がいろいろとあるため、生徒の障害や実態に応じた取り組みができるのが特徴。
ことにEMを使った作業は、@EM活性液を仕込む、Aボカシ作り(米ヌカを近所の農家からもらい受け、EM活性液と混ぜる)、B生ごみを集める、C生ごみとEMボカシを混ぜ合わせてEM生ごみ発酵肥料を作るなどの過程で、どの生徒もなにがしらの作業に参加できます。

 
平成18度の報告書によれば、「1日300食、年間178回の給食を作るが、どうしても食べ残し、生ごみが発生する。調理によるくずも加えると相当な量になり、現状では生ごみとして焼却処分している。作業学習として、試行的に始めたので全量処分ではないが高等部の作業学習がある火・金曜日は調理くず及び食べ残しを引き取り生徒と一緒に野菜くずを手で細かく引きちぎったり、EMボカシを和えながら一次発酵処理を行ってきた。1学期は計12回作業を行い総計360.3sの処理を行った。給食生ごみを日量平均で30s処理したことになる。これは調理くずの量を差し引いたとしても予想よりかなり多い量だった。(収集運搬ごみ処理業務報告書によると平成17年7月1304s、平成18年7月833s)平均からの予測では年5トン以上が生ごみとして発生すると思われる。全量処理は今後の課題だが、給食生ごみを堆肥化して農園芸班などが野菜作り(畑作り)に利用するなど、「食の循環」や環境について、体験的に学習していきたい」となっています。6年後の現在は、給食残さのみ1週間に1回約10kgを堆肥化。年間およそ480kgの生ごみをリサイクルしていることになります。スタート時よりも少なくなったのは、手作業のため給食の調理残さの野菜だけを堆肥化するようにしたためです。班員は13人。スタート当時よりも少量となったとはいえ、このEM生ごみ発酵肥料は「農園芸班」の生徒たちの手で、学校の前にある農園の土に返されています。ここでは、トウモロコシなど、化学肥料などを使わずに栽培され、生ごみがおいしい野菜になることを生徒たちは体感しています。

 
岡崎先生は、「エコ班」の3代目担当教諭。EMを最初に取り入れた遠藤先生(すでに退職し、モンゴルでシニアボランティアとして活躍中)から活性液の作り方や生ごみの堆肥化などの方法を受け継いできました。岡崎先生は「生徒たちの方が先生かも。先輩たちから、体験的にこうするんだよと教えられてきたようだ」と話します。岡崎先生自身も、EMについては試行錯誤で、「生ごみも米ヌカも無駄なく大地に返されるのが、気に入っている。ただ、液肥などをどう使ったらよいのかわからない」とのことで、先生の意欲だけに頼るEM環境教育の大変さを見る思いがしました。
またボカシや密閉バケツを保管する準備室が以前よりは格段に整理整頓されてきたことや、落ち着きのない生徒が作業に集中できるのもこの作業の効果とも。

 
ところで、平成23年度神奈川県教育委員会表彰に同じ作業班である「クリーン班」が選出されています。クリーン班はPTAと協力して校舎周囲のフェンスのペンキを塗ったり通学路の清掃や狩川沿いのゴミ拾いをしたりといった活動が評価されたそうですが、この活動にもEM活性液が役立ちそうです。また、地域との関係でいえば、小田原市の生ごみリサイクル・小田原生ごみ(イキごみ)プロジェクトへの参加も考えられます。市民の中でEMボカシづくりも精力的に行われていますが、市内ではEMボカシを販売しているところは少なく、ボカシの供給がEM生ごみリサイクルの広がりのネックになっています。生徒たちの作ったEMボカシは、秋に開催される文化祭で配布されているとのこと。あっという間になくなるほどの人気ですが、さらに生徒たちに奮闘してもらい、地域の生ごみリサイクルに貢献してもらうことができるのではないでしょうか?学校内外で、生徒たちが活躍できる可能性があるように思われますし、そのつながりが養護学校の存在に光を当てることになるのではないでしょうか。