特集 自然農法とEM  
「えむえむ関東95号」より
=EMネット埼京=
EMを活用したハウス園芸の楽々農業
埼玉県加須市種足1043   梓沢 實

 
 筆者とハウス内のナスの生育状態
 
施設園芸ビニールハウス 
EMとの出会い
 
        
 私は騎西町役場に勤めており、平成16年3月に定年退職し就農して、早6年を経過しました。我が家は母親と家内で田畑約1haの耕作と施設園芸ハウス(畑地)約450坪(ハウス面積320坪 ビニールハウス)で、昭和46年頃から「ナス初春促成3月〜7月・キュウリ晩秋促成9月〜12月」を栽培してきました。従来の慣行農法で頑張ってきましたが、ナス栽培の大きな負担は連作障害を防ぐ為に3年ごとにハウスの移転をする事が必須条件であったので、大変な重労働であり私が定年退職後に引き継ぐとしても、ハウス園芸もこの儘では、農薬や加重労働に限界と疑問を感じて就農を躊躇していました。
 その様な環境の中で私は退職前から連作障害について、休日を利用して精農家を訪ねたが、確定的なヒントが中々得られませんでした。
騎西町のイチジク栽培の由来を調べた処、昭和45年頃から栽培され、その過程でイチジク栽培が衰退した記録があります。その原因は「株枯病」と云う土壌菌による被害で減少してきましたが、騎西町は減反を対象にイチジク苗を無償配布で、栽培面積は拡大しましたが慣行農法では「株枯病」がいまだに続発しています。私は、町内を巡回する機会が多くイチジク栽培農家、数十軒の圃場を見て回りました。たまたま元町長を勤めた私の本家は、農業の経験もないのに、イチジクの樹勢が素晴らしく不思議に思っていました。元町長(現NPO法人EMネット北埼の理事長)に直接体験を聞きました。長老曰く「町長を退任後の平成5年12月頃に著書『地球を救う大変革『を求め、著者は琉球大学教授農学博士比嘉先生(現在名桜大学教授)で、熟読すればする程に環境汚染によって、この儘では地球の崩壊を警告されて(生ごみは土から生まれたもので土に還す)循環型社会の構築に、EMという好気性・嫌気性微生物の発酵培養で農業・環境・医療等で、国内はもとより世界百数ヶ国にEMの普及実態を切々と訴えられている文章に感銘した。自ら試行錯誤しながらEM活性液やEMボカシU型を造り1年熟成し、平成9年に70歳でイチジク50本を試験圃場へ新植しEMボカシU型を100%使用して栽培に挑戦した。農作物は化学肥料の窒素・リン酸・カリに依存するとイチジクの株枯病や連作障害等が発生する。だから私は、化学肥料を一切使用せず試行している」と懇切丁寧に解説された。EMボカシの使用で(生物の働きで連作障害が防げる素晴らしさを知り納得しました。私が悩んでいたハウス移設と云う大きな重労働から開放されると確信したからです。

慣行農法から自然農法(EM)へ転換

 私は、自然農法(EM農法)の素晴らしさを確認したので、退職する1年前にEMボカシU型造りの指導を受けて1t容器に密閉して1年間熟成して準備しました。ビニールハウスは10連棟ありますが、初年度は100%の実施はできず、5連棟は慣行農法を継続して、5連棟には12月上旬にEMボカシU型約1トンと稲藁1反分を刻み投入して耕耘しビニールで地面を覆いました。数日後に地面を確認すると地面が真白な「カビ」が一面を覆っているので驚き、長老に聞くと地温によってEMが活動して放線菌・糸状菌が表に顔を出したので喜ぶべき現象だと説明されてホットした事が懐かしく思い出されます。
 初年度のEM自然農法の結果は、従来の慣行農法では肥料の追肥(液肥)や農薬による消毒の回数など労働等の差は大きく、EM農法では元肥EMボカシU型1tを5連棟に投入した以外に「ナス初春促成・キュウリ晩秋促成」一切の追肥はなく増収を得ました。
 家内は30年以上の慣行農法の経験から12月の収穫後に全連棟の地面に石灰窒素を散布してビニールで覆う事は、窒素ガスで土壌消毒と肥やしの両面から30年来の慣行としてきたので実施しました。結果は慣行農法の5連棟は従来通り異常はなかったものの、EM農法の5連棟は地面に「ミミズ」の死体が一面を覆っていたので驚き、長老に聞くと『悪玉菌を殺すつもりが、善玉菌も殺すと同時に土壌改善に大活躍する小動物まで殺傷する事は百害あって一利なし』と自然を生かす農法は、「土中の善玉菌(EM微生物)を供給する事こそ重要」と言われ、その様な経験をし、EM農法の実践から新たに理解を深めました。
 翌17年度は10連棟をEM農法に切り替えて約2tのEMボカシU型と、稲藁2反分を刻み前年の12月に投入、耕耘して土作りに専念した事はもとより、前年の経験を生かし石灰窒素の使用も中止して全面的にEMの働きに全幅の信頼をして臨みました。
 その後は毎年全棟に「ナス・キュウリ」を連作してきましたが、年々収穫量は増収を得られると同時に農薬の回数は激減しても樹勢旺盛でありながら、節目の間隔は細かくなり花も多く着きます。尚、平成19年頃からナスの場合、授粉を向上する為に全棟に蜜蜂をハウス内に放置する事を導入したので、農薬はその間殆ど使用しないで収穫した「ナス・キュウリ」の個体は均一で出荷不良品(変形)は数%で、優良品は慣行農法時代には考えられない出来映えで、箱詰め作業能率は向上して楽しく過ごしています。

知事賞2度受賞、苦農業から楽々農業へ
 
 
 平成22年度知事賞を受賞
平成22年12月30日現在、原稿を書いていますが、12月10日で今年の「キュウリ晩秋促成」出荷は終了しました。図1・図2の北埼地区野菜一元共販出荷組合へ年度別・月別の出荷数量を「ナス・キュウリ」グラフで出荷キロ数を表示していますので是非ともご参照下さい。今年で丸々6年を経過した中で、ハウスの移転もせずに結果を見れば歴然とした実績は、6年間を連続して増収で今日に至っており、連作障害は微塵もありません。
 既に、平成20年度の北埼地区野菜一元共販出荷連絡協議会(加須市・羽生市・川里町)総会でハウスナス部門で「ナス初春促成栽培の樹勢及び収量」に対して埼玉県知事賞を受賞しました。
 尚、22年度も9月の北埼地区野菜一元共販連絡協議会総会で2度目のハウスナス部門で受賞の栄誉に輝く事は、誠に有難く只々EMとの出会いと関係者の皆様のご指導の賜物とお陰様と深く感謝申し上げる次第であります。

 特に私がこの紙面を通して是非とも皆さんに再認識して頂きたい事は、もう1度グラフ(図2)の「キュウリ(晩秋)促成栽培の前年度と今年度の出荷数量の記録」差異であります。平成21年度出荷数量6,294Kgで22年度は9,134Kgであり、その差は2,840Kgで約31%の増収です。22年の夏は猛暑でハウス内の日中温度は40度以上で、(ナス初春促成)は7月10日頃に収穫を終了して主枝残渣を収納して耕耘整地し、8月1日(キュウリ晩秋促成)に直接播種しましたが、毎日が灼熱の暑さで発芽した新芽が日中の高温時に焼ける現象が現れ、私と家内は約3週間連続して日中の高温の時間帯に交代で水を噴霧して、全棟の気温を下げる作業を行いました。
 大変な異常気象であったが「キュウリの根張りなど」EMボカシ(微生物)による土壌改良に大きな力が発揮されて大増収になったと確信するのであります。
 今にして私が思うにハウス栽培は、温度・給水等の環境管理と早期に作物と対話(発育観察)で気象条件を見極める事が我々の仕事で、作物の求める栄養管理は、すべてEM微生物にお任せする事だと実感すると同時に、24時間の作物の生命を左右するのは土壌中の善玉菌であると達観するに至りました。我が家でハウス栽培の経験年数では家内が38年で私は6年です。慣行農法で苦労してきた当時と、今のEM農法(自然)との比較について家庭談笑の中で、家内から「毎日の作業が楽しく数十年前と体力的に比較すれば、不思議なくらい作業が楽しく作物の病害の心配が少なくて、農薬の使用回数も激減して健康に対する不安が一掃出来たことです。体力的に負担が増えた事と言えば、収穫量が断トツに多くなった為に『収穫と出荷』作業量が多くなった事」と家族で大笑いしております。
 私は、多くの友人知人に季節ごとに「ナス・キュウリ」を差し上げていますが、美味しいと喜ばれており、これからも健康の許す限りEMと共に頑張ります。ハウス栽培に精進されている方なら、坪当たり収量は明らかな様に、慣行農法とEM農法の差異は歴然としています。春季・秋季に現地ハウスを見て下さい。私は、EMで今日があるので、決して包み隠さず有りの儘のEMの働き振りをお伝え申し上げます。