特集 自然農法とEM  
「えむえむ関東95号」より
=EMネット山梨=
EM資材で モモ・ブドウづくり 全量宅配販売
EM山梨セーフティ 弦間敏雄

はじめに



私の住む笛吹市御坂町は甲府盆地の東側、石和温泉から河口湖に向かう国道沿いに、東西約14km、南北約 4kmと細長く、また標高差もだいぶある中山間地で、モモやブドウ栽培を中心とした農村地帯である。
私は高校卒業と同時に就農し、農業を始めた。父の代は米と養蚕が中心であったが、私は順次モモ・ブドウ栽培に切り替え、現在では借地も含めてモモ90a、ブドウ90aの合計 180aを妻と二人で栽培している。
以前は組合出荷のみで、化学肥料と農薬を当たり前のように使っていたが、自分の体のことや食べる人のことを考えて、肥料は牛糞や豚糞堆肥に替え、ライ麦を使った草生栽培を導入し、まず手軽にできることから始めた。
肥毒を一日も早く抜くために、化学肥料はもとより堆肥の量を年々減らし、特に窒素量には気を使った。窒素成分が多いと枝が徒長的に伸び、固く絞まったものにならないので、結果として病虫害を減らすことができないと考えたからである。
また全量組合出荷から少しずつ宅配販売をはじめ、年間50件くらいずつ口コミで増えていった。

EM栽培へ

17年前、EMを知った。EM栽培は EMポカシU型づくりからはじめた。比嘉先生の講演会にも何度も足を運び、EMの力を学んだ。
EM活性液のことも知り、百倍利器の共同購入の仲間にも入れてもらい、土壌や素面散布に活用した。しかし、散布に必要な大量の EM活性液は一度に入手できないため、1 0年前個人で「百倍利器 (200リットルタイプ )」、1 tタンク 2個とヒーターを購入し、現在は週 2 tの二千倍 EM活性液を製造し活用出来るようになった。

土づくり

 
 
 
 
初めは化学肥料に頼り、秋にまず石灰を施用、その後 10日以上置いて組合の配合肥料を施用、この後にトラクターで耕転していた。その結果トラクターの刃の届かないところに固い層ができ、降雨では表面はドロドロになっても水は何時までもはけず、畑に入れない状態がつづいた。
EMを知ってからは、次のように変え良い結果を得ている。
@秋の施肥 (元材)では、EMポカシU型を 10aあたり 100kg、米糠 45kg、未熟木材チップ 2tを樹の根元へマルチし、不耕起栽培とした。秋を中心に、二千倍 EM活性液を 10aあたり 1tを土壌に集中散布している。
A夏収穫するモモ・ブドウで販売できない物は加工(ジュース)に出荷せず、畑に置いた 50?タンクで百倍EM活性液と合わせて使い発酵させ、これを畑に散布している。
B夏中に発生する徒長枝や冬の暫定で落とした枝もチッパーでチップ化し発酵させ堆肥化して活用す
る。
C春の追材には、 10a当たりEMボカシU型 30kgにEMセラミックスパウダー発酵C(以下発酵 C)5kgを混用し施肥する。以前は秋 1回のみのEMポカシ散布であったが、夏の餌が亡くならないようにと、春にも少量散布することにした。

葉面散布

(1)モモ

@開花前の3ヶ月に、百倍EM活性液を200倍に希釈し発酵C2000倍混用で2回散布する。
A開花後は、いったんEM活性液濃度を500倍に薄め、落花とともにまた濃度を高め散布する。摘花期はEM活性液濃度100〜200倍に発酵C2,000〜5,000倍加用散布する。袋かけ直後は果実も肥大し、果実に白い斑点が残るので、発酵Cの濃度には気を付ける。
B袋かけ後は、果実に直接かからないので濃度は気にせずたっぷり散布する。
C除袋後の散布は EM活性液のみで行う。 5年前から EM 7も混用しているが、モモの肉質の硬軟で散布回数や濃度、さらには最終散布時期も考慮する必要があると思われる。

(2)ブドウ
@萌芽前までは、百倍 EM活性液100-200倍に発酵 C2,000倍を加用して散布する。
A萌芽後は EM活性液500倍発酵 C500倍から徐々に濃度を上げ散布する。種無し品種にはEM 7を10,000倍で混用するが種あり品種は樹勢を見ながら使用する。
B仕上げ摘粒から袋かけ前は、果面のブルームを落とさないために、EM活性液の散布回数を少なくし、農薬管理も併用する。
C袋かけ後は EM活性液を中心に100倍まで濃度を上げていき、発酵 C、EM7を混用する。

モモ、ブドウ共に、発酵 C、EM 7は低濃度から始め、特に最終散布時期は種類毎に様子を見ながら混用している。
「百倍利器」での EM活性液の仕込は、EM 1号を 2リットル、糖蜜を 4リットルの基本に、EM 3号を 1リットル、ニガリを 1リットル、発酵Cを20g加えて、 200リットルの百倍 EM活性液を製造している。このEM活性液で仕込む二千倍 EM活性液は農業用にも利用できるので、利用価値が高い。
この EM活性液 5リットルに発酵 C500gを混用 し果樹の根元へ、年 3回はどジョウロでかけられればと思っている。
冬には、果樹の間伐材を利用して炭焼きをし、できた炭は粉砕して畑に散布する。木酢液も採取し、EMや農薬散布時には、木酢液を先に水に希釈して活用している。

栽培の成果と課題

17年間の挑戦の間、EM資材も豊かになり、確実に成果はみられるようになってきている。
モモ、ブドウの糖度は、慣行栽培と比べれば、数度は高く、モモではここ3年間の収穫初めの10個の集計だが、平均糖度は16度、最高は平成21年の白鳳の23度 になり、顧客からも "味がよくなった""とおいしくなった"と高評価を得ている。
笛吹市では、 4年前(2007年)からバイオマスタウン構想の一環で、EMを使った生ごみ堆肥と二千倍 EM活性液の無料配布を行っている。もらいに来る人が多く、今は少量配布でお試し用であるが、市民に EMのことが徐々に知られるようになり、家庭菜園では本格的に使用する人も出てきている。しかし果樹ではなかなか効果が見えないので、せっかく始めたのに、3年も経たないうちにやめてしまう人が数多くいる。
もっと簡単に EMを樹上にも土中にも畑全体に定着させることができないか、野菜や稲作では数年で効果が現われるが、果樹の場合は長い年月がかかるのと経費も負担となる。
笛吹市の EM活性液は二千倍まで培養しているので日持ちしないのとこれ以上培養できないのが残念である。
また生ごみは、団地や学校に設置した大型生ごみ処理機「蘇生利器」で、またモデル地区から収集してより大型の蘇生利器で発酵堆肥にし、市民に無料配布しているためか、経費や時間的にも制約があり、生ごみ堆肥はサラサラの粉末状でなく、べっとりとした粘土状で、活用するに当たっては種々工夫しないと大変苦労すると聞いている。
しかし、年数回の学習会を通じて利用者が多くなり、EMの普及・定着に大きく貢献していることは確かである。

終わりに

我が家では、全量宅配で販売しているので、食味と安心・安全を心掛けている。
栽培面積は当地域平均の約 2倍ほどあるので、各種の資材を使い試験をしているが,収益を上げることが大切なため、最後まで試験を続けることが困難な場合があり、未だに使用方法が定まっていない。
モモとブドウとでも多少使用する EM資材や使用濃度も違う。
私たちがこれまで実践してきた中で、特に効果が出ると思われる技術を広く伝え、産地としてのモモ・ブドウのブランド化を図っていきたい。
最後に、我が家の長男が今年から家に入り、農業をすることになったので、今まで以上に種々挑戦できると思う.。精一杯頑張りたい。