特集 EMでつなぐ環境活動と福祉
えむえむ関東85号より
=EMネット埼京発=
仲間1人ひとりが生き生きと地域の人たちと環境活動
                社会福祉法人「かわせみ」支援員 吉岡直紀

福祉施設の概要
施設名は「かわせみ」といい、埼玉県日高市にある社会福祉法人「日和田会」が設置運営されている障害福祉サービス事業所です。「かわせみ」は埼玉県西部に位置し、9月〜10月には全国的に曼珠沙華(彼岸花)で有名な「巾着田」の近くにあり、自然の豊かな場所に所在しています。「かわせみ」は多機能型の施設で、生活介護、就労支援、就労継続B型の事業を展開。又共同生活介護事業としてケアホーム「野ばら」「野ばら園」も併設運営されていて、今年で21年になります。
支援員 吉岡 直紀さん 施設「かわせみ」 屋上の園芸作業場
施設の沿革
四季折々の花や野菜の
苗の栽培・販売
リサイクル作業
施設の事業沿革は下記のとおりです。
1988年12月 社会福祉法人「日和田会」設立
1989年4月  知的障害者通所授産施設「かわせみ」開所(30人)
1997年7月 「かわせみ」の分場施設として「第2かわせみ」開所
2001年8月 知的障害者短期入所事業開始
2003年4月 「かわせみ」定員増(37人)
2003年5月 グループホーム「野ばら」開 設(5人)
2005年9月 「かわせみ」定員増(39人)
2006年9月 知的障害者短期入所事業廃止
2006年10月 グループホーム「野ばら」、ケアホーム移行 ケアホーム「野ばらの園」開設(4人)
2008年1月 ケアホーム「第2野ばら」開設(2人)
2008年4月 「かわせみ」多機能型事業開始(40人)
「第2かわせみ」生活介護事業開始(20人)
2009年4月 ケアホーム「野ばらの園第2」 開設(2人) 

施設の目的
 「かわせみ」「第2かわせみ」は、障害者自立支援法に基づき運営されている事業所です。利用者(仲間)の意向を尊重し多様な福祉サービスが総合的に提供されるよう創意工夫することにより、仲間を一人の人格ある個人として尊厳をまもりつつ、労働を軸に自立した生活を地域社会において営むことができるよう支援することを目的としています。

福祉施設の基本方針
 福祉施設の方針は以下のとおりです。
(1)どんな障害を持っていても、一人ひとりの仲間の人格を尊重し、労働を軸に人間として生きる権利と発達の保障をめざします。
(2)一人ひとりの仲間が主人公として働く喜びと生きがいをもち、自立した人間としてたくましく豊かな生活を築くことのできる人格の発達をめざします。
(3)労働と生活、教育と医療を統一してとらえ、一人ひとりの仲間の豊かな発達の保障をめざします。
(4)開かれた施設として、地域の人たちの理解と協力を広げると共に、障害者権利保障運動の一翼を担って一人ひとりの仲間の豊かな生活と社会参加をめざします。  

自治活動
(1) 豊かな生活を築き上げるために、仲間同士の話し合いを大切にし、一人ひとりの人格を尊重し高め合う場としています。
(2) 仲間一人ひとりの思いを大切にし、協力して行動できる集団性を育てるようにしています。
(3) 工賃アップを目標に、計画的に生産活動を進める力を育てていくようにしています。
(4) 仲間が主体的に企画立案し、その成果を仲間同士が相互評価し合える力を育てるようにしています。

EM活用とそのきっかけ
 多機能型障害福祉サービス事業所「かわせみ」には「農業班」があり、以下の作業を行っていて、EMとのかかわりも多岐にわたっています。
(1)農園芸・EM
@ 農作業(畑作業)
・ 約550坪の畑を利用して無農薬・有機野菜づくりをし、販売を行っています。併せて観賞用野菜づくりも行っています。
・ 販路は施設を中心におき、地域へと出張販売を広げています。
A 園芸作業
・ 温室・ビニールハウスを活用しながら、四季折々の花や野菜を栽培し、年間を通した園芸を行っています。
・ 地域に根ざした販路の拡大を目指しています。(仲間のお店、巾着田、近隣の神社、学校、保育園等公共機関での販売)
・ 近隣の病院や福祉施設の花壇の管理・運営の委託事業を拡大、定着させています。
B EMボカシ作業
・  生ごみの有効活用を目指したEMボカシと、新製品としてEM入浴剤作りを進めています。
・ EMボカシの普及と共に、生ごみの発酵容器(EMバケツ)の販売を進めています。
・ 作業工程を工夫する中で、品質の向上を目指しています。
・ 地域のリサイクルメンバーと協力しながら、効能や活用方法を広く市民に知らせ、公民館等を通して販路の拡大を目指しています。

(2)リサイクル
リサイクル作業
・ 地域に根ざしたアルミ缶、牛乳パック、古紙類、ビン等のリサイクル事業を安定的に行っています。
・ 地域のリサイクル協力者との交流を通して、地域に根ざしたリサイクル事業を進めています。
・ 「かわせみ」のリサイクル事業に対し、地域の方々の理解を広げ、協力者を増やしていきます。
・ お知らせ(チラシ)を作成し、配布しています。 

 EMとのきっかけは日高市の「巾着田」の祭りでトイレの消臭を地元EMボランティア団体「日高市環境浄化を進める会」(EMネット埼京会員)が実施されたときの会員の方との出会いです。

EM作業の内容とその様子
 EMボカシづくりは毎日の作業として行い、熟成後毎月250〜300袋(300g入り)を5箇所の公民館などで販売しています。 
 さらに日高市内だけでなく、川越市、狭山市、川口市からも注文をいただいています。電話での問い合わせも多く、先日遠く東京都の八丈島からも注文をいただき、思わぬ驚きと併せて大変な喜びでした。
EMボカシの他に糖蜜やEM関連商品や生ごみ発酵容器(EMバケツ)の委託販売も行っています。時代の背景もあり、家庭菜園をはじめる方が増え、生ごみの発酵容器(EMバケツ)はよく売れています。併せて、EMボカシの使い方等、EMを活用した自然農法のアドバイスもしています。
屋上での
EMボカシ作り
倉庫でEMボカシの
保管・熟成
EMボカシと
委託販売品の一部
工芸班
 
EM石けん(サンプル)と
販売チラシ
EM石けん作り指導の
鈴木花子さん
工芸班では染め物、ステンシル、石けんを中心としたオリジナル商品を製作し、販売を行っています。
 特に施設で発生する廃食油をリサイクルして作った廃食油EM固形石けんは、学校や市役所のイベントなどで毎月1回で約45個のペースで出張販売しています。
「日高市民祭り」で地域の下水道業者からお土産用として100個の注文があり、地域の環境意識向上に大いに役に立っています。
「EM固形石けん」は水垢やガンコな油汚れもよくおちると大評判です。
 その他名刺、オリジナルカードの請負。さらに、草木染のTシャツ、手作りポプリバッグ、キーホルダー、ストラップ等の注文販売を行っています。又、「食品加工班」でのバターケーキ、ゼリー及び「クッキー班」での手作りクッキー等の自主製品の製造販売なども行っています。

工夫している手順・運営など 
・質の良いEMボカシを作るため、玉にならないように一度乾燥させた後、目の粗いものから細かいものまで工程に合せてふるいを使い分け、丁寧に仕上げるようにしています。
・ 仕込み毎に、EM活性液を作り、EMボカシづくりをしています。
・EM石けんづくりにはプラスティックケースで形良く仕上げています。そして取り出しやすくするため、あらかじめケースに油を塗るように工夫をしています。

仲間の方や家族の方の様子や感想など
・「EMボカシ作り」は重度障害者でも担当でき、障害の程度に合せて作業が出来ます。
・ チームで作業ができ、輪になって作業ができ、仲間との連携が深まります。
・ 楽しくのんびり作業でき、生き生きと作業しています。
・ 毎日の作業として、見通しのつく事業になっています。
・ 家族の方達も積極的に普及活動をしていただいています。
・ 仲間の職に対する意識が高まり、環境にも良い、時代にあったものと思えます。 

地域住民の方とのかかわり
・ 市役所からの協力・理解を得て公民館での販売をさせていただいています。
・ 地域のEMボランティア団体「日高環境浄化を進める会」の協力を得ています。
・ 仲間の営業活動をして、チラシのポステイ ングなど地域社会とのつながりを深めています。
・ 施設の給食システムから発生する「生ごみ堆肥リサイクル」も実施しています。
・ 近隣の「お蕎麦屋さん」「喫茶店」、隣町の「ラーメン屋さん」そして「クリーニング屋さん」に工芸班の製品を常時置かせていただいています。特にEMせっけんは評判がよく、クリーニング屋さんから「もうないよ!」とよく連絡をいただきます。
・ 近くの高麗神社(悠久1300年の由緒ある神社)でのイベントなどではお店を出させていただいています。丁度今年は1300年記念事業でのイベントとして近隣の企業さん等と共に出店させていただきます。
・ 仲間達が作ったものを販売するときに参加することで「これらは僕たちが作ったものです!」と活躍して貰うことで、そこでの製品の売り上げが仲間たちの「よろこび」、そして具体的な給料にも反映し、仕事の励みに結びついています。

これからの夢
・ EMボカシをもっと知ってもらえるよう普及活動をさらに進めていきたいと考えています。
・ 多くの仲間がさらに広く社会へ巣立っていくように願っています。
・ 地域とさらに交流を深めて、EM活用しての「生ごみ堆肥化リサイクル」を進め、生ごみを減らす市民との学習会などの大きな交流が出来ればと願っています。
・ いろんな方に「かわせみ」の仲間をもっともっと知ってもらい。そして仲間達がこれからもどんどん外に出かけていき、本当の意味の自立に向け、良いサイクルになるようにしたいと願っています。
EMボカシと自治会長の
石井学さん
右端は取材訪問の
EMネット埼京の
上山クニ子さん

高麗神社チャリティーバザー
に出店しました
「これらは僕たちが作った
ものです」

仕事へのよろこびがあふれます
そして給料にも反映!!