特集 市民活動と福祉
「えむえむ関東97号」より
=EMネット神奈川=
EMを伝えることが私たちの使命
 コツコツと取り組む

神奈川県・川崎市 EM普及活動研究会 吉田賢治

今年の春、EM 普及活動研究会代表の吉田賢治さんにうれしいニュースがふたつ舞い込んだ。
ひとつめは、平成22年度「かながわ地球環境賞」奨励賞に選ばれたこと。
 
二つ目は、NPO市民アカデミーとの地域協働企画委員会でEM環境授業講師養成講座の実施が決定したことだ。
同会は、2003年からEMによる生ごみリサイクルの普及と環境浄化のため、川崎市内各地で、定期的な講習会の開催やイベントを行ってきたが、表彰と講師講座の開催で会の代表である吉田さんは「これでようやく9合目まできたかな」と手ごたえを感じている。
 
活動の原点は生ごみリサイクルから

吉田さんとEMのつき合いは、今から13年前、同じ川崎市に住む知人から福祉施設で製造されたEMボカシの販売を頼まれたことから始まる。
この知人から、「EMはボランティアですよ」と釘をさされていたので、鼻から商売抜きで扱うつもりで、生ごみリサイクルの普及に力を注いだ。
その5年後、川崎市で比嘉照夫教授の講演会があり、生ごみリサイクルだけではない、EMの話に目から鱗だったという。さらにEMによる生ごみリサイクルの普及を進めたいと市のイベントなどに参加していたが、使い方がよくわからないままやめてしまう人が多いことに気がつく。
そこで、生ごみリサイクルを広めるためには、EMとは何か・EMボカシ作り方などを教えられる人を増やすことが大事と、2003年から川崎市生涯学習プラザで、隔月でEM生ごみリサイクル講習会を始めた。
途中、住吉こども文化センターなどに場所を移した講習会は9年間で50回以上を数える。
また、宮前区宮崎町会の婦人部でも隔月に講習会を始め、市のごみ減量指導員が広報の中心となって町内会の活動になっている。

トイレのニオイ消しから環境教育が始まる

学校の環境教育に関わるきっかけは、川崎区小田小学校で生ごみリサイクルとボカシづくりの体験授業だった。
たまたま、トイレの臭いが気になり、EM希釈液を撒いたところところニオイが軽減し、EM100倍希釈液の作り方と散布の仕方を指導した。
その結果、トイレだけではなく体育館の汗やパソコン教室のニオイが消え大変喜ばれた。
その翌年、市内小中学校のトイレ悪臭除去事業を市の公益活動助成事業として提案し採用される。
以来、毎年、川崎市教育委員会を通して市内170校以上ある小中学校へEMによるトイレ掃除を提案する手紙を送り、昨年は、20校の学校に活用された。
その実績が評価されて、学校プールの水質浄化を環境教育の一環として始めることができた。このEM環境学習は、4年間で延べ20校、昨年度では7校の小学校で実施されている。このEM環境教育は、市内だけではなく、神奈川県の環境出前授業に採用されている。 
また、地域の水質改善にも力を入れ、2008年には、多摩区役所建設センターと協働で、公益活動事業として向ヶ丘遊園南側河川と北側用水の水質浄化を行い、総量3.1tのEM活性液を投入して成果を上げた。翌年には川崎北ライオンズクラブの支援と等々力公園の依頼により、ハス池にEM活性液1t、EM団子1,300個投入。2010年度も川崎北ライオンズクラブの支援を受け、EM団子1100個、EM活性液2tを投入。この年から、EM団子は宮内子供文化センターで、今年は更に新城子供文化センター、大戸子供文化センターで子どもたちの手で作られることになっている。
海の日に行われる全国一斉EM浄化作戦には、子どもたちが作ったEM団子を矢上川へ投入して参加する予定だ。
   
 
川崎市のボランティア団体として

ここまで広範囲にEM活動が行われてきた要因は、会が直接市民と触れ合うことのできる宮前区民祭・エコフェスタ川崎2010・かわさきボランティア市民活動フェアーなどに積極的に参加したことにあるが、行政、市民、企業が協働する「かわさきコンパクト」に所属したこともかなり大きい。
「かわさきコンパクト」の目的は、「持続可能な都市づくり、世界に貢献できる都市づくりという理念を共有し、それぞれが責任ある行動をとっていくことを目指す。
市民、企業、NPO、行政等がそれぞれの特徴を活かした役割を積極的に引き受けつつ、相互に協働していくことにより、川崎市が直面する課題はもとより国内外の社会問題や環境問題の解決に貢献していく」というもの。
川崎市内にある本社・事業所を持つ企業が地球規模の経営環境変化を自らの課題として認識し、社会からの要請を踏まえて主体的な活動を展開していくことを促す「ビジネスコンパクト」と、地域課題、地球環境問題などの課題を市民一人ひとりが認識し、地域からの具体的な活動を促す「市民コンパクト」で構成されている。
■宣言1 私は川崎の町と人と自然を大切にします。
■宣言2 わたしの‘地球温暖化対策’を進めます。
■宣言3 かわさきコンパクト・パートナー企業と協働します  が3つの約束である。
この「市民コンパクト」に参加してから、企業との協働が始まり、日本理化学工での工場汚染水の浄化、富士通の工場にある生ごみ処理機からの悪臭対策などにEMが使われ、いずれも効果がでており企業がEMへの理解を深める機会となっている。
同じ環境問題を行う「市民コンパクト」間の連携も深まった。家庭菜園を行う「うずまきの会」、海岸の森づくりを行う「うみかぜの会」、「二ヶ領ウォッチグフォーラム」などと交流し、それぞれの活動にEMが加わることで何倍もの相乗効果が期待される。

未来のためにEM指導員の養成を

メンバーは活動ごとに、参加メンバーを募集し、担当者を定め、協議・実施するやり方で固定的な会員は20人ほど。EM生ごみリサイクル、EMイベント、EM環境授業、EM環境浄化活動と、それぞれの得意分野に手をあげる。
お互いに日程を調整しながら、協議を重ね、実施していくしくみは、あまり無理がないと会員にも好評だ。吉田さんも、常に、メンバーの自主的活動を尊重し、活動しやすい環境・状況づくりに配慮している。年毎にメンバーのEMに関する知識のレベルアップはもちろんだが、「地域のために役立っている」というボランティア意識が高まり、活動そのものを楽しむ余裕もできた。
 「これからは、EMの指導者をたくさん育てることが一番の仕事」という吉田さんはネット神奈川の副理事長も務めるめる。
「いろいろな仕事をして、自然食品店に行き着き、EMに出会ったのも、私の宿命だと思う。たくさんの人にEMを通して共存共生の社会を創り上げていくのが、私の人生の役割と思っている。ぜひ、やり遂げたい」と締めくくった。
10月から始まるEM環境授業講師養成講座(市民アカデミー主催)は、川崎生涯学習プラザで開催される。プール実験には、川崎市青少年の家のプールが使われる見込みだ。(取材 小野田明子)